半坪ビオトープの日記

人形石


オシラビソの樹林の中の薄暗い登山道の視界が開けると、広々とした岩場に出る。東の彼方向こうに見えるのは、東大巓や一切経山、東吾妻山などの山並みである。

翻って南を見ると、これから目指す西吾妻山がどっしりと構えている。

大岩が固まっているところが人形石(1,964m)である。秋のすがすがしい青空が晴れ渡って心地よい。

9月も下旬になると山の花もほとんど見当たらないが、岩陰に何やら目立たない緑白色の小さな花が咲いているのを見つけた。

よく見ると、コメバツガザクラ(Arcterica nana)の花である。北海道、本州の中部地方以北と大峰山、氷ノ山、大山の亜高山帯〜高山帯の砂礫地、岩陰に生える常緑小低木で、よく分枝して高さは5~10cmになる。葉は革質で3個ずつ輪生し、縁はやや裏に巻く。枝先に3個ほどの白い花が下向きに咲く。花冠は壷形で5浅裂する。まだつぼみもあるが、咲き終わって枯れたさく果が上を向いている。

陽のあたっているこちらの岩陰では、コケモモ(Vaccinium vitisidaea var. minus)が赤い実をつけていた。北海道、本州の中部地方以北、四国の亜高山帯〜高山帯の林縁、草地、岩礫地に生える常緑小低木で、よく分枝して高さは5~15cmになる。葉は革質で互生し、光沢がある。やや赤みを帯びた白い花を下向きにつける。液果は6mmほどの球形で、赤く熟し甘酸っぱい。

高さ3mはあろうかという人形石は、大岩が4個ほど集まっているのだが、どうして人形石というのかそのいわれは分からない。

こちらの岩陰には、ガンコウラン(Empetrum nigrum var. japonicum)が真っ黒な実をつけていた。北海道、本州の中部地方以北の亜高山帯〜高山帯のハイマツ林の林縁、雪田付近の砂礫地、岩陰などに生える雌雄異株の常緑小低木で、地を這ってマット状に広がる。5~6月に咲く花はほとんど目立たず、径8mmほどの液果は黒く熟し食べられる。果実酒にするとブドウ酒色になる。

こちらの岩陰にはヤマハハコ(Anaphalis margaritacea)が咲いていた。北海道と本州の中部地方以北の山地帯〜高山帯の乾いた草地に生える雌雄異株の多年草で、高さは20~50cmになる。頭花は散房状に多数つく。光沢のある総苞片がよく目立つ。