半坪ビオトープの日記

満月沼


夫婦池分岐近くまで戻ると、手前の鏡池脇の湿地帯にはエゾワタスゲのほかにもいくつかの花が咲いていた。

こちらの穂状花序に淡緑色の花をたくさん咲かせているのは、ラン科ツレサギソウ属のホソバノキソチドリ(Platanthera tipuloides)である。北海道、本州中部地方以北、四国の亜高山帯の草地や湿地に生える多年草で、高さは20~40cmになる。背萼片と側花弁はかぶと状になる。よく似たコバノトンボソウとの違いは、茎が比較的太く、長く伸びる距が下向きになることである。

鏡池だけでなく擂鉢池でも旭岳の姿が映るのを眺めることができる。やはり7合目位まで緑が認められる。ここ第三展望台では、ギンザンマシコという鳥を求めて全国よりカメラマンが集結するという。氷河期の証人と呼ばれるギンザンマシコは、北海道の高山帯でのみ確認され、普段はハイマツの下で生活し、深紅色の体色が美しいという。

旭岳と反対の西には、ハイマツ林の中に満月沼が見える。まん丸なので名付けられたという。

ハイマツの手前には赤く色づき始めたコケモモの実があり、その手前には短く細かい葉の先にガンコウラン(Empetrum nigrum var. japonicum)の黒い実がいくつか見える。ガンコウランとは、北海道、本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯ハイマツ林の林縁、砂礫地、岩陰などに生える雌雄異株の常緑小低木で、葉が茎に密生しマット状に地面を這う。葉の長さは5mm前後。花期は初夏で、花は小さく目立たないため、見ることは滅多にない。8mmほどの果実は食べられ、ジャムにもできる。果実酒はブドウ酒色になる。

白い花をたくさん咲かせているのは、ウラジロナナカマド(Sorbus matsumurana)である。北海道、本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の低木林や林縁に生える落葉低木、高さは1~2mになる。葉は奇数羽状複葉、小葉は4〜6対あり、長楕円形で鈍頭、縁には上から2/3位まで鋭い鋸歯があり、裏面は粉白色を帯びる。枝先に複散房花序を出し、白い小花を多数開く。秋に真っ赤な紅葉となり、赤い実を多数熟す。

満月沼の近くに寄ると、丸い形が認められる。チングルマやコエゾツガザクラも咲いている。

ここに来て初めて、キバナシャクナゲ(Rhododendron aureum)が咲いているのを見つけた。北海道、本州中部地方以北の高山帯のハイマツ林の林縁などに生える常緑小低木で、高さは10~30cmになる。雪解けとともに花開き、大群落をつくる大雪山では7月半ばが最盛期となる。かなり遅くまで雪が残っていたものと思われる。手前の輝く葉の間で淡緑色のつぼみが見えるが、チングルマのつぼみである。

今度は右手(西)に、チングルマのお花畑が現れた。かなり遠くまで咲いている。