半坪ビオトープの日記

D尾根


300階段などがあって道はかなり急で長いが、これ以上になく澄んだ青空と緑なす山々、足下には次々と新しい高山植物が現れるので、ほとんど休みなく登り続けることができる。
この赤い花は、高山でおなじみのヨツバシオガマ(Pedicularis chamissonis var. japonica)である。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯のやや湿り気のある草地に生える多年草で、高さは20~50cmになる。シダのような葉が、茎の節ごとに4個ずつ輪生する。茎の上部に普通4個ずつ紅紫色の花を4〜8段輪生する。

この小さなリンドウは、ミヤマリンドウ(Gentiana nipponica)である。北海道と本州中部地方以北(主に日本海側)の高山帯の草地に生える多年草で、高さは5~10cmになる。葉は茎に対生し、形は小形の卵状長楕円形で長さは5~10mmである。茎の上部に長さ15~22mmの青紫色の花を4個ほどつける。花冠は5裂し、裂片の間に副片があり、裂片とともに平開する。

こちらの黄色い花は、ミヤマキンバイ(Potentilla matsumurae)である。北海道と本州中部地方以北の高山帯の砂礫地、草地、雪田の周辺に生える多年草で、高さは7~20cmになる。葉は3出複葉で、小葉は長さ2~4cmの卵形で光沢があり、粗い鋸歯がある。花茎の先に径2cmの5弁花を数個開く。
まわりの細長い葉は、ミヤマイ(Juncus beringensis)と思われる。北海道と本州中部地方以北の高山帯の湿り気のある草地に生える多年草で、高さは15~40cmになる。花がついていないが、キンスゲ―エゾコザクラ群集の標徴種であり、エゾコザクラの群生近くなので間違いないと思う。

大きな葉に黒紫色に熟しているのは、サンカヨウ(Diphylleia cymosa ssp. grayi)の実である。北海道、本州中部地方以北と大山の山地帯〜亜高山帯の林縁や広葉草原に生える多年草で、高さは30~60cmになる。直径2cmの白い花は枯れ落ちているが、白粉をかぶる径1cmの液果は、黒紫色に熟して食べられる。

サンカヨウの周りの小さな白い花はキク科コウモリソウ属のコモチミミコウモリ(Cacalia auriculata var. kamtschatica subvar. bulbifera)である。北海道の大雪山、夕張山地などの山地から亜高山帯の林縁に特産する多年草で、高さは60~120cmになる。
葉は腎形で長い柄があり、3〜4個が互生する。基部は耳状で茎を抱く。葉腋に黒褐色の珠芽(むかご)がつくので子持ちという。茎頂の総状円錐花序に長さ1cmの白色の頭花を多数つける。頭花は5〜6個の筒状花からなり、花冠の先は浅く5裂する。

ようやく左手に化物岩をやり過ごすところまで来たが、まだD尾根の半ばくらいで、あと1時間ほど頑張らないと稜線には立てないだろう。

道端で伸びきったウサギギクを見つけたが、エゾウサギギク(Arnica unalaschcensis)であろう。北海道と本州中部地方以北の高山帯の砂礫地や草地などに生える多年草で、高さは10~30cmになる。立山でも見かけたウサギギクの母種であり、違いはわずかで、北海道ではエゾウサギギク、本州中部ではウサギギクが多いので、エゾウサギギクとする。

右手の富良野岳から三峰山の辺りに、早くも雲が涌き出した。天気がよいといっても山の天気は変わりやすい。出発が遅かったので急がねばなるまい。