半坪ビオトープの日記


民宿街の中心には浄土宗の蓮台寺がある。永和年間(1375~79)南北朝の時代、到阿上人によって開創されたもので、本尊仏は恵心僧都の作との寺伝がある。

本堂の前には蓮台寺の大イチョウがある。今から500年余り前に植えられたと推定されている。北(右)のイチョウは、樹高26m、南(左)のイチョウは樹高25mで、地元では夫婦イチョウと呼ぶ。江戸時代(寛政)と関東大震災で本堂が焼失したときも生き続けてきたという。

蓮台寺の近くの道端に、ユリ科スキラ属のツルボ(Scilla scilloides) が咲いていた。日本全土および中国などに分布する多年草で、花期は8〜9月である。スキラ属といえば、園芸用のペルーウィアナ(S. peruviana) やヒスパニカ(S. hispanica) がよく知られているが、世界中に多くの種が自生している。シラー属、ツルボ属ともいう。ツルボは、昔からヒガンバナとともに飢饉のときに役立つ救荒植物として知られ、第二次世界大戦後の食糧難の時代にも地下の鱗茎がよく食べられたそうだが、水にさらしてよく煮なければならないという。

海岸から歩いて1時間ほどの南東の山の麓に岩婦温泉があるというので、どんなものか見に行くことにした。
岩井駅の南で内房線を渡ると「岩井の大蘇鉄」があったので立ち寄った。一般にソテツは大きくなると横に広がるものだが、このソテツは5本の主幹と支幹とも直立し、樹高は8m、根回り6.5mの雌株という。伊豆にある国指定天然記念物の「新町の大ソテツ」に次ぐ、日本有数の巨樹といわれ、千葉県の天然記念物に指定されている。樹齢は1000年以上と伝えられ、治承4年(1180)石橋山の戦いに敗れ当地に着いた源頼朝が、このソテツを見て称賛したという。

大ソテツの先の集落内に小さな神社があった。竹内(たけのうち)の八雲神社という。この神社の屋台も龍や鳳凰の彫刻が見事で、南房総市の指定文化財になっている。作者は後藤喜三郎義信という明治時代の彫物師である。

館山道をくぐって右に岩婦温泉へ向かうと、田んぼから山の麓に近づいていく。道端でナガコガネグモを見つけた。体長25mm、手足を含めると75mmほどあり、背中は黄色と黒の縞模様でとても美しいクモである。