半坪ビオトープの日記


5月の半ばにあちこちで咲いていたのがこのジャーマン・アイリス(German irises) で、基本的な形態はドイツアヤメ(Iris germanica) に似るが、いくつもの野生種や複雑な交雑を経て改良、育成されてきた園芸品種群をさす。
ジャーマン・アイリスは約200年前にドイツやフランスで育成され始めたが、現在ではもっぱらアメリカで作出されている。毎年多くの園芸品種が発表されているので特定するのは難しい。
内花被片が淡黄色、外花被片が白地に濃茶色の覆輪のこの花は、’カランバ’(Iris 'Caramba') と思われる。

イリスという属名は、ギリシアのテオフラストス(植物学の祖)が用いたギリシア語の iris(虹)に由来する。和名はアヤメ属で、日本にはアヤメ、ヒオウギアヤメ、シャガなど数種が自生している。
内花被片がクリーム色、外花被片が赤紫色のこちらの花は、’ステッピング・アウト’(Iris 'Stepping Out') と思われる。

アイリスはエジプトやヨーロッパで古くから描かれてきた。紀元前700年のスフィンクスの頭上にあるブロンズ椅子にアイリスの飾りがあり、最古の絵はクレタ島のクノッソスにあるミノス王宮殿のフレスコ画といわれる。

ルネッサンス以後も、ダ・ビンチの「岩窟の聖母」やデューラーの「アヤメのマドンナ」、ブリューゲルの「イリス・パリダ」、ゴッホの「ドイツアヤメ」、セザンヌの「青い花びん」などにアイリスが描かれている。

古代ギリシア、ローマ人は、盾の紋章に保護や長生きを保障する意味でアイリスを用いたという。アイリスの紋章は古くからフランス王家の紋章とされるなど、ヨーロッパでは数多くみられる。
聖書時代には、アイリスの三つの内花被片は父、子、聖霊が天に達しようとする祈りを、三つの外花被片は父、母、子どもを表したという。