半坪ビオトープの日記

カルデラ展望台


ようやく立山カルデラ展望台に着いた。600m20分のところ15分で上ったが、石畳の道は思ったより急であった。室堂でもよく見かけた大きなオオハナウドが2m近くまで伸びきって咲いていたが、霧が谷から涌き上がっていて残念ながら立山カルデラは見えなかった。立山カルデラは、立山山塊の西南部にある東西約6.5km、南北約5kmの浸食カルデラで、立山火山の崩壊と浸食によってできた。カルデラ内には刈込池などの堰止湖が点在し、かつては立山温泉があったが明治末期の地震と土石流の災害やその後の崩壊などで廃湯となっている。毎年約50億円かかり無期限といわれる砂防工事は、とりわけ大規模で世界的にも有名になっている。

展望台の脇でまだつぼみが開いていないシモツケソウ(Filipendula multijuga)を見つけた。本州関東地方以西、四国、九州の山地の日当りのよい草地に生える多年草で、高さは30~100cmになる。葉は互生し、下部の葉は羽状複葉になり、茎葉はモミジ葉のように掌状に切れ込む。枝分かれした花茎に総状花序を出し、小花はつぼみではピンク、咲くと淡い赤紫色で4弁、雄しべが長く毛羽立ったような花を咲かせる。高山型変種として中部地方と関東地方の亜高山帯から高山帯に自生するアカバシモツケソウ(F. m. v. cilliata)や、富山県から山形県日本海側の山地に自生するコシジシモツケソウ(F. auriculata)があり、そのどちらかではないかと思うが、違いがわずかで決めつけられない。

展望台の上空では雲がめまぐるしく動き回っていて、時々青空が垣間見えるが、すぐにまた雲に覆われる。

展望台で一休みしてから引き返し始める。緑色の小さな花を咲かせているのは、ユキザサ属のヒロハユキザサ(Smilacina yezoensis)である。本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の林内に生える雌雄異株の多年草で、高さは40~70cmになる。葉は長さ15cmほどの長楕円形で、互生である。茎も花も全草緑色で、日本固有種である。

輪生する3枚の葉が大きく見えるこの花は、ユリ科エンレイソウ属のエンレイソウ(Trillium apetalon)である。北海道から九州の山地帯から亜高山帯のやや湿った林内に生える多年草で、高さは20~40cmになる。葉は葉柄をもたず、長さ幅とも6~17cmの広卵状菱形で、花は内花被片がなく、外花被片は3個で緑色から暗紫色をしている。黒く熟した果実は食べられる。根茎は中国では延齢草根と呼ばれ、古くから薬草とされるが、有毒植物であり過量に服用すれば嘔吐、下痢などの中毒症状を起こす。

このイワカガミは、葉の鋸歯を粗くて浅いとみるか、鋭いとみるか微妙だが、前者とみてコイワカガミとしよう。

こちらのスミレの花は、ミヤマツボスミレ(Viola verecunda var. fibrillosa)であろう。本州中部地方から東北の八甲田山の亜高山帯から高山帯の林縁の草地や湿原周辺に生える多年草で、高さは5~25cmになる。葉はほぼ円形で小さい。花は淡紫色を帯びる。ツボ(ニョイ)スミレの高山型とされる。

こちらの5cmほどの大きなマイマイは、クロイワマイマイと思われる。カタツムリ(マイマイ)の種類は、世界で約1万種、日本でも約700種あるそうだ。地方ごとに大型の代表種があり、関東ではミスジマイマイがよく知られている。中部山岳で大型種は、クロイワマイマイが分布している。

ラムサール湿地


弥陀ヶ原は、立山の麓から称名川の左岸にかけて、東西4km、南北2kmに広がる溶岩台地であり、その上に広がる雪田草原「立山弥陀ヶ原・大日平」は、標高1,040~2,120mと、国内のラムサール条約湿地では最高所に位置している。昨年(2012)ラムサール条約に登録されたばかりで、あちこちに新しい木道が設置されている。

室堂から天狗平を経て弥陀ヶ原までのハイキングコースに突き当たると、この木道の向こう側がラムサール条約登録地であると表示がある。天狗平から合流する木道を右手に見れば、その左側が登録地である。天狗平や大日岳(2,501m)も霧に霞んで見えない。

左を見ても下から雲や霧が上がってくるのが見える。こちらは遊歩道なので、木道が新しい。

木道が終わる辺りで小川を渡り、東に向きを変えて戻り始める。すると3cmほどの小さなカエルを見つけた。背中のイボと模様を見ると、やはりこのカエルもアズマヒキガエルに違いない。今年育ったカエルであろう。

ここでもナナカマドの花を見つけた。小葉が13枚あるので、ウラジロナナカマドか最も普通種のナナカマド(Sorbus commixta)か判断が難しい。鋸歯の様子で分かるのだが見極められない。ナナカマドは、北海道〜九州の山地帯から亜高山帯の林内に生える落葉高木で、高さは7〜10mになる。立山でも標高2,000m位まで分布するという。秋の紅葉と赤い実が美しくよく知られているが、緑の中で一部紅葉しているのも風情がある。

指に止まった8mmほどの甲虫は、ハナカミキリに似ているが、ゾウムシ科のリンゴコフキゾウムシ(Phyllobius armatus)である。体表に金緑色の鱗粉が珍しく、腿節には内側に鋭い歯状突起を有する。

林内で白い花を咲かせているのは、モミジカラマツ(Trautvetteria caroliniensis var. japonica)である。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の湿った草地に生える多年草で、高さは20〜50cmになる。根生葉は円形で掌状に深裂し、裂片には鋭い鋸歯がある。花は1~1.3cmだが花弁はなく、放射状の白い雄しべが目立っている。

こちらは室堂でもよく見かけたハクサンボウフウである。葉の切れ込みには変化が多いのだが、この葉もモミジのような形をしている。

弥陀ヶ原遊歩道


室堂から弥陀ヶ原へ3時間のハイキングコースがあるのだが、途中に崩落箇所があって進入禁止ということなので諦めた。というより荷物を背負って滑りやすい木道やクサリ場は元々無理だと思われた。弥陀ヶ原でバスを途中下車して、遊歩道を散策することにした。
バス停そばの道の脇に咲いていた花は、シモツケソウ属のオニシモツケ(Filipendula camtschatica)である。北海道と本州中部地方以北の山地帯から高山帯の林縁や湿った草地に生える多年草で、高さは0.5~1.5mになる。大きな葉はふつう掌状に5中裂し、縁には粗い切れ込みと重鋸歯がある。花は散房状に小花をたくさんつける。

こちらの道端にはテガタチドリとバラ科のワレモコウ(Sanguisorba officinalis)が咲いていた。ワレモコウは、日本各地の日当りのよい山野に生える多年草で、高さは70~100cmになる。枝先に暗赤色で円筒状の直立した花穂をつける。初秋の山野を彩り、親しみを感じさせる野草である。

弥陀ヶ原ホテルの脇に、マツムシソウ属のタカネマツムシソウ(Scabiosa japonica var. alpina)が咲いていた。本州中部地方以北と四国の亜高山帯から高山帯の草地や砂礫地に生える2年草または1年草で、高さは20~30cmになる。葉は羽状に深く裂け、重鋸歯がある。和名は、夏の終わりマツムシの鳴く頃に咲くことによる。

弥陀ヶ原ホテルの裏手から遊歩道が始まる。雨上がりでも滑らないよう工夫を凝らした木道が長々と続く。

チングルマの花が咲いている湿地に、赤っぽいカエルが動いていた。皮膚のイボの様子から、アズマヒキガエル(Bufo japonicus formosus)と分かる。本州の山陰地方、近畿地方以東および北海道に分布する。大きさは6〜15cmと大型で、この個体は6cmほどなので2年目位の個体であろう。

弥陀ヶ原高原は、標高約1,600~2,100m、南北2km、東西4kmにわたる高原である。木道が敷かれた湿原にはガキの田と呼ばれる池塘が点在する。

ガキの田広場の近くには、キスゲ属のゼンテイカ(Hemerocallis dumortieri var. esculenta)が咲いている。本州中部地方以北の山地帯から高山帯の草地や湿地に群生する多年草で、高さは60~80cmになる。

ゼンテイカは、朝開いて夕方にはしぼむ1日花で、直径約5cmのロウト状鐘型、雄しべは上に曲がる。別名のニッコウキスゲの名がよく知られている。禅庭花という名は、日光の戦場ヶ原を中禅寺の庭に見立て、そこに咲く花として名付けられたという。

日御碕海岸、稲佐の浜


日御碕神社から出雲大社に向って日御碕海岸をもどったが、まもなく道路端にタヌキがいるのを見かけた。排水溝の蔭から顔を出したり引っ込んだりしている。近寄ってみた時にも一度は顔を出した。でもよく見ると、タヌキより顔が細いアナグマだった。

日御碕海岸は、出雲大社に近い稲佐の浜から日御碕灯台まで、小さなリアス式海岸が続いていて小島や岩礁が多く、風光明媚な景観が続く。

目の前の大社湾に浮かぶ小島には、つぶて石とかかつら石、くじら石などと名もあるらしいが、見極めるのは難しい。

大社湾の彼方向こうには、出雲の山から岩見の山が見える。最も高く見える山は、三瓶山(1126m)である。岩見国と出雲国との境に位置する三瓶山は、『出雲風土記』が伝える国引き神話では、鳥取県の大山とともに国を引き寄せた綱をつなぎ止めた杭とされている。

出雲大社に近い稲佐の浜が見えてきた。大国主神が建御雷神に国を譲ったという、国譲り神話の舞台となった浜である。建御雷神が「否(いな)、然(さ)(ノーかイエスか)」と迫ったことが名前の由来という。旧暦10月の神在月に、全国の八百万の神々をお迎えする浜でもある。

稲佐の浜にある丸い島は、「弁天島」といい、神仏習合の頃には「弁財天」が祀られていたが、今は豊玉毘古命が祀られている。水平線に沈む夕日が美しい浜辺で、日本の渚100選」に選ばれている。


民宿街の中心には浄土宗の蓮台寺がある。永和年間(1375~79)南北朝の時代、到阿上人によって開創されたもので、本尊仏は恵心僧都の作との寺伝がある。

本堂の前には蓮台寺の大イチョウがある。今から500年余り前に植えられたと推定されている。北(右)のイチョウは、樹高26m、南(左)のイチョウは樹高25mで、地元では夫婦イチョウと呼ぶ。江戸時代(寛政)と関東大震災で本堂が焼失したときも生き続けてきたという。

蓮台寺の近くの道端に、ユリ科スキラ属のツルボ(Scilla scilloides) が咲いていた。日本全土および中国などに分布する多年草で、花期は8〜9月である。スキラ属といえば、園芸用のペルーウィアナ(S. peruviana) やヒスパニカ(S. hispanica) がよく知られているが、世界中に多くの種が自生している。シラー属、ツルボ属ともいう。ツルボは、昔からヒガンバナとともに飢饉のときに役立つ救荒植物として知られ、第二次世界大戦後の食糧難の時代にも地下の鱗茎がよく食べられたそうだが、水にさらしてよく煮なければならないという。

海岸から歩いて1時間ほどの南東の山の麓に岩婦温泉があるというので、どんなものか見に行くことにした。
岩井駅の南で内房線を渡ると「岩井の大蘇鉄」があったので立ち寄った。一般にソテツは大きくなると横に広がるものだが、このソテツは5本の主幹と支幹とも直立し、樹高は8m、根回り6.5mの雌株という。伊豆にある国指定天然記念物の「新町の大ソテツ」に次ぐ、日本有数の巨樹といわれ、千葉県の天然記念物に指定されている。樹齢は1000年以上と伝えられ、治承4年(1180)石橋山の戦いに敗れ当地に着いた源頼朝が、このソテツを見て称賛したという。

大ソテツの先の集落内に小さな神社があった。竹内(たけのうち)の八雲神社という。この神社の屋台も龍や鳳凰の彫刻が見事で、南房総市の指定文化財になっている。作者は後藤喜三郎義信という明治時代の彫物師である。

館山道をくぐって右に岩婦温泉へ向かうと、田んぼから山の麓に近づいていく。道端でナガコガネグモを見つけた。体長25mm、手足を含めると75mmほどあり、背中は黄色と黒の縞模様でとても美しいクモである。


永年、夏の合宿は、館山外房の相の浜にある寂れた民宿を定宿としていたが、今年は思い切って内房の岩井海岸の民宿に変えた。
海岸に近い民宿は、JR岩井駅からだと15分、館山道のバス停ハイウェイオアシス「富楽里」からだと25分歩く。JRの特急を使用するより高速バスだと料金がほぼ半額なのでバスで行った。

「富楽里」には軽食コーナーのほかに、漁協直営の郷土料理店「網納屋」がある。定置網の海鮮丼(1260)は地魚が盛りだくさんなので迷わず注文した。イサキの炙り、ブダイ、マダイ、ショッパチ(カンパチの子ども)の刺身は、どれも活きがよくて美味しいので人気が高く、すぐに売り切れになってしまった。

「富楽里」からは田んぼの中をてくてくと歩く。稲穂は重く垂れ下がり、早くも刈り取られた田んぼがあちこちにあった。

道端でツチガエルが跳ねた。南西諸島と対馬などを除く日本および朝鮮半島や中国に分布するカエルで、アカガエル科に分類される。4cmほどの大きさで、背中には大小のイボ状突起がたくさん並び、そのため各地で「イボガエル」とも呼ばれる。

岩井海岸に面する久枝(くし)集落には100軒を超える民宿があり、その中心あたりに天満神社がある。
毎年8月20日の岩井の祭りでは、各地区から屋台が道の駅「富楽里」に集まるそうだが、久枝天満神社の屋台は新しくて彫刻も見事だという。

遠浅の砂浜が1km以上続く岩井海岸では、夏休み最後の週末でもまだ海の家が2軒も営業していて、朝早くからサーファーに混じって海水浴客もちらほら見かけられた。この後、昼近くになると、家族連れなど海辺で遊ぶ人々の数はかなり増えていた。


安房白浜温泉は野島崎周辺に点在するホテルにより泉質や温度も違うが、源泉といっても17度から23度ですべて加温されている。
野島崎からホテルに向かって海岸沿いを歩くと、赤いアロエの花が満開だった。この花は、アロエ・ノビリス(不夜城、Aloe nobilis) という人気種で、木立アロエ以外では最もよく見かけるアロエであるが、これほど多くの花を咲かせる大株には滅多にお目にかからない。

道端にはテンニンギク属のテンニンギク(天人菊、Gaillardia pulchella) が野生化して咲いていた。原産は北アメリカ東南部からメキシコ北部で、花期は7〜9月とされる。英名は、Firewheel あるいは Indian blanket という。赤色の花弁に黄色の覆輪が鮮やかでよく目立つ。モンキチョウも密の味が気に入っているのか、なかなか逃げない。

ホテルの近くで大きなオニグモが数匹、ほぼ1m毎に大きな網を張っているのに出会った。手足を除いた体長だけでも2cmを超えていた。

使われていない駐車場にソライロアサガオ(Ipomoea tricolor) が伸び伸びと広がっていた。中央アメリカ原産の多年草で、花期は8〜10月とされるが、最近は初夏から晩秋までよく見かける。

バス停で海女コンテストのポスターを見ながら、老女に海女の話を聞いていたら、「私は現役の海女だよ。素潜りはつらいから、最近は若い人はいないよ」などと苦労話をいくつか聞くことができた。

千倉に向かうバスから、千倉の夏祭りに使う山車や神輿の準備の様子を見ることができた。