半坪ビオトープの日記

栂池高原自然園

栂池高原自然園
さらに右手を眺めると、自然園から白馬大池方面の尾根が見えるが、おおかた雲に覆われていた。

オヤマリンドウ
この青紫色の花は、日本特産種のオヤマリンドウ(Gentiana makinoi)。中部地方以北の亜高山帯や湿原、草地に生える多年草。茎の先端部に花を多数つける。花弁は5裂するが平開しない。秋の湿原を代表する花の一つといえよう。

クルマユリ
こちらの百合も秋の高原でよく見かけるクルマユリLilium medeoloides)。高さは30100cm。茎の上部に1〜数個の花がつく。6枚の花被片はオレンジ色で、濃紅色の斑点がある。葉が茎の中央部で6〜15枚輪生し、上部に3〜4枚まばらにつく。北海道や中部地方以北と、大台ヶ原と四国の剣山の高山帯〜亜高山帯の草原に自生する。中国、朝鮮半島、サハリン、カムチャッカ半島、千島列島など冷涼地に生育する。

モミジカラマツ
この白い花は、キンポウゲ科のモミジカラマツ(Trautvetteria caroliniensis var. japonica)という宿根性多年草。北海道と中部地方以北の高山帯の湿り気のある場所に生える。高さは4060cm。花茎の先に散房花序の白い花を多数つける。花弁はなく、白く見えるのは雄蕊である。葉は掌状に裂ける。花の形は近縁種のカラマツソウによく似るが、葉の形がモミジ様になることで区別できる。

イブキトラノオ
こちらのタデ科の花は、イブキトラノオBistorta officinalis)という多年草。北海道から九州の山地帯から高山帯に分布し、日当たりの良い草地に群生する。高さは50120cm。花茎の先に長さ6cm前後の白色か淡紅色の花穂をつける。花弁の様に見えるのは萼で、深く5裂する。根は硬く肥大し、漢方では「拳参(けんじん)」と呼び、乾燥したものを煎じて、口内炎扁桃腺炎、湿疹、下痢、痔疾などの薬とする。

自然園は浮島湿原(1920m)からさらに進むと展望湿原(2010m)や展望台まで至るが、浮島湿原で引き返す。この白い花はオニシモツケFilipendula camtschatica)という多年草。北海道と本州中部以北に分布し、深山のやや湿った場所に自生する。高さは1.5〜2mになる。葉は茎に互生し、奇数羽状複葉で葉柄があり、掌状に5裂する。茎先に小さな5弁花を散房状につける。

ヒオウギアヤメ
こちらの紫色のアヤメの花は、ヒオウギアヤメIris setosa)という多年草。本州中部以北の高層湿原や北海道の霧多布湿原などに自生する。高さは4070cm。円形または心形の外花被片は大きく、網目模様がある。内花被片は小さく目立たない。花柱は3つに分かれ花びら状に見える。その花柱の基部は黄色。花はアヤメによく似るが、内花被片が小さく、葉もヒオウギに似るが広くて異なる。

オニシオガマ

シソ科のオドリコソウに似るこのピンクの花は、ゴマノハグサ科シオガマギク属のオニシオガマ (Pedicularis nipponica)という多年草。 石川県から青森県の本州日本海側に分布し、深山の湿った谷間などに群生する。高さは40〜100cm。葉は対生し、5枚前後の大型の根生葉は羽状に全裂し、裂片は深く裂け、両面に白毛がつく。茎につく葉は小型で羽裂せず、上部のものは苞になる。花期は8〜9月で淡紅紫色の花が下段から上段に咲いていく。上唇は舟を伏せたような形で、中に雄蕊が4本、下唇は3裂して広がる。

オタカラコウ
こちらのキク科の黄色い花は、オタカラコウLigularia fischerii)という多年草。本州(福島県以西)、四国、九州の山地から亜高山帯の湿った草原に自生する。ヒマラヤや東アジアにも分布する。フキのような根生葉は数個つき、長さ2040cm、幅2030cmの腎心形。茎の上部に頭花を総状につける。頭花には8個内外の舌状花がある。

ミズバショウ湿原
散策の最後にやや北側にあるミズバショウ湿原を通って戻る。ここのミズバショウは本州で一番遅咲きといわれ、6月下旬から7月上旬まで楽しめるというが、さすがに8月上旬では、大きくなったミズバショウの葉が左手前にあるだけで、今まで見てきたオタカラコウやオニシオガマの花の背後にはオニシモツケの群生が広がっている。自然園の入口から浮島湿原まで行き引き返した約2時間の湿原散策は久しぶりに見る数々の花で賑わっていた。

唐松沢氷河
帰りの栂池ロープウェイから大きな雪渓が二つ認められたが、右手のものは杓子沢雪渓と思われる。その左手(南)のものも非常に大きな雪渓である。乗務員の説明によると、唐松岳2969m)の中腹に白く大きく見えるのは、唐松沢氷河(17502280m)だという。2018年に白馬村、新潟大などが結成した「唐松沢氷河調査団」による調査結果の論文に基づき、2019年に日本雪氷学会にて「氷河」であることが学術的に確認されたそうだ。ちなみに白馬大雪渓は、雪渓の下がトンネル状で流動が確認できないため「雪渓」に分類されるという。