半坪ビオトープの日記

桃岩展望台へ

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桃岩登山口の上にあるレンジャーハウス

三日目、天気は芳しくないが、いよいよ礼文島最大の見どころ、桃岩展望台コースを歩く。まずは桃岩登山口の上、レンジャーハウスまでタクシーで向かう。

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利尻山(1,721m)

利尻山1,721m)が見えるけれど残念ながら雲が多い。それでも残雪によりその勇姿が認められるのが幸いだ。左の山裾に小山があるが、それがポン山(444m)で、登山口はその右手にあるはずだ。もちろん往復11時間の登山は若者でなければ無理である。

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桃岩展望台から桃岩を見る

15分で最初の展望スポット、標高228mの桃岩展望台に着く。目の前に礼文を代表する奇岩、桃岩(250m)が迫る。桃岩はマグマが作った巨大な溶岩ドームで、新第三紀中新世に、浅い海底の柔らかな堆積物にデイサイトマグマが貫入してできたと考えられている。

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桃台・猫台と駐車場

桃岩の左手の谷底には桃台・猫台という、桃岩と猫岩の展望台とその駐車場が見える。

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猫岩

その先の磯に立つ四角い岩が、右上の二つの突起を耳と捉えて形から猫岩と呼んでいる。背中を見せているというが、こちらを向いているようにも見える。

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桃岩の右手の山

桃岩の右手にも高い山があり、その裾の彼方に元地港が見える。

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桃岩登山口のバス停

山の連なりは北へ続き、桃岩登山口のバス停も眼下に認められた。北の彼方に見える高い山は、正確なコンパスと地図がないと確かめられないが、礼文岳と思われる。

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レブンハナシノブ

展望台から先は広々とした高原ハイキングコースの雰囲気で、標高200mほどなのに高山植物が咲いている。紫色のこの花は、レブンハナシノブ(Polemonium caeruleum ssp. Yezoense var. laxiflorum f. insulare)という礼文島特産種である。学名が非常に長いが、北海道に分布するカラフトハナシノブの中で、礼文島だけに自生するハナシノブ属の多年草。花期は5月下旬から6月下旬。花序が短く花が密生している。

左上のマルハナバチは、エゾオオマルハナバチ(Bombus hypocrita sapporoensis)と思われるが、日本に生息するマルハナバチは20種以上になるので、北海道に住むもののうちから見た目で最も似ているハチとして選んだ。

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サクラソウモドキ

こちらの風変わりな花弁の花は、サクラソウモドキ属のサクラソウモドキ(Cortusa matthioli ssp. Pekinensis var. sachalinensis)で、礼文島利尻島、札幌周辺などに分布する。北海道レッドリストでは、レブンサクラソウモドキとして希少種に指定されているように、礼文島には多い。サクラソウ属のように花が平開しないので、似て非なる種属である。茎先に下向きの花をつけ、紫紅色の花冠は漏斗状で先が五つに裂ける。

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桃岩

桃岩にはアイヌの伝説がある。時は江戸時代、礼文島において香深アイヌと天塩アイヌとの間に争いが起こった。やがて、香深アイヌからの休戦の申し入れを天塩アイヌが受け入れて、桃岩の頂上で講和の誓いをたて祝宴となった。そして、香深アイヌが頂上に祭壇を作り、数々の宝物を天の神に供えたところ、端から彩雲が降りてきて宝物を受け取り、天空遥かに舞い上がっていった、と伝えられている。

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エゾノハクサンイチゲと桃岩

桃岩を眺めながら進むが、花の種類がだんだん多くなってくる。この白い花は、エゾノハクサンイチゲAnemone narcissiflora var. sachalinensis)というイチリンソウ属の多年草。北海道から東北地方北部、サハリンの高山帯に分布する高山植物

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エゾノハクサンイチゲのお花畑

桃岩の左手に向き合う崖は北向きだが、斜面にはエゾノハクサンイチゲが咲き乱れていてお花畑となっている。桃岩展望台から元地灯台にかけての丘陵地帯は、礼文島屈指のお花畑があり、「花の浮島」とも呼ばれる。海をバックに高山植物のお花畑を眺められる場所は、日本広しといえども、ここ桃岩周辺だけである。