半坪ビオトープの日記

上対馬町の韓国展望所と比田勝

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「蜂洞」

佐護の対馬野生生物保護センター近くの道端の斜面に、奇妙な木造物「蜂洞」を見つけた。対馬は日本ミツバチしかいない唯一の島である。その養蜂の歴史は古く、古事記の時代まで遡る。元禄年間に書かれた陶山訥庵の「津島紀畧乾」に「養蜂は継体天皇507-531)の頃、太田宿禰が山林より巣を取って飼育する方法を村人に教えた」という記録がある。丸太をくりぬいた独特な形の「蜂洞」という巣箱を使う。今でも昔ながらの伝統製法で作られる対馬和蜂の非加熱蜂蜜は、対馬の一年分の草木の蜜が熟成された百花蜜という。

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アスクレピアス(トウワタ

佐護湾の東側に聳える千俵薪山の中腹に「異国の見える丘展望台」があるのだが、大雨による道路の通行止めでたどり着けなかった。急いで北上して上対馬町に入り、対馬の最北端、鰐浦の韓国展望所に着く。道端にはオレンジや黄色の色が目立つ鮮やかな花が咲いている。キョウチクトウ科トウワタ属のアスクレピアス(Asclepias curassavica)は、長い絹状の毛を持つ種子の姿からトウワタ(唐綿)の和名でも呼ばれる。

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韓国展望所

韓国まで49.5kmの至近距離にある韓国展望所は、韓国の古代建築様式を取り入れて建造され、ソウルのパゴダ公園にある施設をモデルとしている。天気の良い日には韓国釜山の街並みが見渡せるという。

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ヒトツバタゴ

韓国展望所の西の麓にある鰐浦の西側には、国の天然記念物であるヒトツバタゴの大群生地がある。ヒトツバタゴ(Chionanthus retusus)は、モクセイ科のトネリコ(別名「タゴ」)に似ており、トネリコが複葉であるのに対し、本種が小葉を持たない単葉であることから「一つ葉タゴ」の和名がある。日本では希少種であり、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている。長野県、愛知県、岐阜県および長崎県対馬市の一部に自生するのみである。木質が非常に硬いことから「ナタオラシ」、白く小さい花を樹上につけて入江を照らすことから「ウミテラシ」、見慣れない木であることから「ナンジャモンジャ」とも呼ばれる。しかし、「ナンジャモンジャ」と呼ばれる木には、クスノキ、ニレ、イヌザクラ、ボダイジュなどがあるので注意を要する。

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鰐浦

西の麓に見下ろせる鰐浦を囲む山肌にヒトツバタゴが群生しているのだが、5月初旬の開花期には3000本のヒトツバタゴが一斉に白い花を咲かせ、初夏に積もる雪のようといわれる。国内最大の自生地で、対馬市の木に指定されている。

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海栗島

北を眺めて晴れていても、中々韓国の陸地は認められない。手前に見える島は海栗島で、夜になるとその向こうに見える、釜山の夜景は美しいといわれる。

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海栗島

海栗島(うにしま)には大変良好なウニが取れることからその名がついたという。今は航空自衛隊のレーダー施設があり、国境の警備を行なっている。

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「朝鮮国訳官殉難之碑」

韓国展望所には「朝鮮国訳官殉難之碑」が建つ。元禄16年(1703)釜山から対馬に向かった108人が乗った訳官使船が荒天のため遭難、全員が死亡するという悲劇が起こった。彼らを悼むために国境や官民の枠を越えてこの碑が造られた。

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「日露友好の碑」

鰐浦から海岸沿いに東に向かっていくと、対馬最東端の岬、殿崎に着く。そこには「日露友好の碑」が建っている。1905年に日本の連合艦隊とロシアのバルチック艦隊が戦った、日本海海戦100周年を記念し、2005年に日露合同の慰霊祭が行われた。この日本一の巨大レリーフのシーンは、バルチック艦隊司令長官ロジェスト・ウェンスキー提督が対馬沖にて重傷を負い、佐世保海軍病院に入院中、日本連合艦隊司令長官東郷平八郎提督が鄭重に見舞った場面である。100年前「地元住民とロシア兵との友情」が芽生えた歴史的な地として、殿崎が「日露友好の丘」と命名された。

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日本海海戦記念碑」と「日露慰霊の碑」

この殿崎公園には「日本海海戦記念碑」も建っている。左に見える記念石碑は、撃沈されたロシアバルチック艦隊の水平143名が命辛々この港に上陸した際に、農作業をしていた地元の農婦が助け、手厚くもてなしたことを記念して建てられた。右に見える「日露慰霊の碑」は2005年の合同慰霊祭に合わせて、ロシア政府が建立した。

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西泊湾内に比田勝

殿崎の南に位置する西泊湾内に上対馬の中心地・比田勝がある。比田勝港は、韓国釜山港への国際航路寄港地であり、博多港からの国内航路発着地でもある。