バンコク最後の見学先は、ワット・プラケオ、ワット・アルン と並びバンコク三大寺院の一つである、ワット・ポーである。正式名称は、ワット・プラ・チェートゥ・ポン・ウィモンマンカ・ラーラーム=ラーチャ・ウォーラマハーウィハーンという。敷地面積は約8万平方メートルとバンコク市内随一の広さ、1788年にラーマ1世により建立されたバンコク最古の歴史を持つ、ワット・ポーには巨大な寝釈迦仏があり、タイ式マッサージの総本山でもある。別名「涅槃寺」とも呼ばれている。本堂は、タイ北部の寺院から集められた244体の仏像を並べた外回廊と、150体並べた内回廊により二重に取り巻かれている。本尊はトンブリにあるワット・サラシーナの本堂から移された黄金色に輝く座釈迦像である。
敷地内には4つの色鮮やかな仏塔が建っている。高さは42mあり、チャクリー王朝歴代の王の遺骨が納められているという。ラーマ1世が緑、2世が白、3世が黄色、4世が青。小さな陶片や中国風のタイルで装飾され、デザインも各塔で少しずつ違っている。
ラーマ3世により製作された巨大な寝釈迦仏は、大きな礼拝堂の中に横たわっている。涅槃像、寝仏などとも呼ばれる。目を開けているので、亡くなる直前に弟子たちに最後の説教をしている姿とされる。
レンガで大まかにかたどられてから漆喰で造形されたというこの大仏像は、全長が46m、高さが15mある。顔の方から全身を眺めることはできない。知恵の象徴である螺髪は右巻きとなっているはずだが、残念ながらそこまでは確認できない。
礼拝堂の中には数多くの柱も立っていて、その間から垣間見る釈迦の顔は、荘厳というより和んでいるかのように優しい。
とても最後の説教をしているようには見えない。
ようやく腹の辺りに来て顔を眺めると、上半身を視野に収めることができる。
ここには小さな寝釈迦仏が二つ安置されていて、花も供えられている。
足元にたどり着くと、10本の指が整然と揃えられている。壁面には、何やら物語が描かれている。釈迦の一生を描いていると思われる。
いよいよ寝釈迦像の足裏が見えてきた。ここからだとようやく足から顔までの全身が一望できる。
足裏は長さが5m、幅が1.5mある。扁平足の足裏にはバラモン教の宇宙観が108面の螺鈿細工画により表現されている。扁平足は「悟りを開いたものの印」、33の身体的特徴の一つとされる。
背面に回っても全身像が見えるが、のっぺりとして表情もなく感動もない。お布施をするための108の黒い鉢が並んでいる。各鉢にサタン硬貨を入れていくことによって、108の煩悩を一つずつ捨てることができるという。
19世紀にはラーマ3世が敷地内に学問所を創り、各学問を説明する絵や文章を壁や柱に書かせたことから、タイ初の大学だといわれる。同時期に医学の府と指定され、東洋医学に基づくタイ古式マッサージの総本山となった。現在でも敷地内でタイ古式マッサージを受けたり、敷地内の学校でタイマッサージの技術を学んだりすることができる。ここでバンコクの見学は終わった。
帰りがけ、外から塀越しにワット・ポーを眺めていたら、リスが走っているのを見かけた。バンコクでは公園など樹木が生えているところでは野生のリスをよく見かけるという。東南アジアに広く分布する、ハイガシラリス属のフィンレイソンリス(Callosciurus finlaysonii)というリスで、白色など毛色が違う亜種が多数あることが知られる。