半坪ビオトープの日記

能取岬、網走ビール館


野付半島の後、知床半島の付け根にある根北峠を超えて、網走市郊外の能取湖に向かう。斜里町の先の小清水原生花園は初日に立ち寄ったところだ。今度も時間は割けず、道路脇のエゾキスゲの群落を見るにとどめた。お花畑まで歩けば、エゾキスゲやエゾスカシユリなどが一面に広がる光景に出会えるのだが、帰りの時間が迫っているので先を急いだ。

網走市街の北、約10kmのところに能取岬(のとろみさき)がある。オホーツク海に突き出した断崖の岬の突端には、白と黒の縞模様の能取岬灯台がある。八角形コンクリート造の灯台は、地上から灯頂部までの灯高21mで、平均海面から灯火部分までの高さは57m、光逹距離は19.5海里(約36km)、大正6年の初点灯である。灯台周辺には網走市営美岬牧場が広がり、5月から10月まで牛馬が放牧される。

能取岬から西を眺めると、砂州で海と仕切られた能取湖がかすかに認められる。この岬は、映画『南極料理人』、中国でヒットした映画『非誠勿擾』(邦題『狙った恋の落とし方』)などのロケ地にもなっていて、それらの案内板が立てられている。周辺海域にはアザラシが生息し、夕日の名所としても人気が高い。ちなみに能取(のとろ)とは、アイヌ語のノッ・オロ(岬の所)に由来する。

能取岬の西にある能取湖は、オホーツク海に通じる海跡湖で、日本の湖沼では14番目の面積を有する。以前は海水流入部の湖口が季節的に開閉しており汽水湖であったが、1973年に護岸工事で湖口が固定され、完全な海水の湖となった。

湖では主にホタテ、サケ、北海シマエビやカレイなどが漁獲される。また、4月から10月にかけて(夏を除く)東部の湖岸で潮干狩りができる。

能取湖の南部、卯原内地区には日本最大とされるアッケシ草(サンゴ草、)の群生地があり、毎年9月頃には一面が紅色のアッケシ草で埋め尽くされる。木製の遊歩道が設置されていて、真っ赤な群生地の中を歩くことができる。また、湖岸をなぞるようにアマモが繁茂しており、日本有数のアマモ場が形成されている。

能取湖に流れ込む小川の淵にすらりとした美しい姿の植物を見つけた。初めて見るイネ科の植物だ。図鑑で調べてもわからない。ヨーロッパ原産のイネ科の植物、ヒゲナガスズメノチャヒキ(Bromus rigidus)によく似ている。ヒゲナガスズメノチャヒキは、大正時代初期に渡来し、戦後に各地に広がった。道端や荒地に生え、高さは40~70cmになる。葉は線形で、6月から7月に茎頂に円錐花序を出し、花序の先に小穂をつけ、小穂には3〜5cmの長い芒(のぎ)がある。しかしよく見ると、芒の長さがもっと長く、ヒゲナガスズメノチャヒキとも少し違うように見える。

湖畔の茂みにマメ科ソラマメ属のクサフジ(Vicia cracca)の花が咲いていた。北海道から九州の草原に生える多年草で、茎の長さは80-150cmになる。5〜7月に淡紫色から青紫色の蝶形花が総状花序で咲く。

同じく湖畔の道路でイチモンジチョウ(Limentis camilla)を見つけた。よく似た種類に本州のみに分布するアサマイチモンジ(L. glorifica)がいる。前種は日本全国に分布する。違いは前翅内側にある白紋が、前種では小さく不鮮明、後種では鮮明なのですぐ見分けられる。しかし、このイチモンジチョウの白紋は非常に小さいが四つもあって少し変わっている。北海道のイチモンジチョウも普通は小紋が一つなので、道東の地域変異種かもしれない。不鮮明だが小紋が多い変種として岩手県陸中海岸の変種が知られているが、それに極めて近い。

同じく道路脇で、ナデシコ科の珍しいマンテマ属の花を見つけた。北海道でも後志地方の太平山や日高山系、網走周辺など数カ所にしか分布していない、カラフトマンテマ(Silene repens)である。海外ではシベリアやヨーロッパ北部にも分布する。横向きの花の花弁は5個あり、萼筒は長さ1〜1.5cmの倒卵形で、10本の脈が目立つ。萼筒の形がユニークで優雅さを感じる。

最後の夕食は、網走ビール館の焼肉で打ち上げ。予算に少し余裕ができたので豪華に特選セットを味わった。

もちろん網走ビールも流氷ドラフトをはじめ種類が多いので、色々と賞味した。店内にはビール製造所の道具類の展示室もあり、その前には網走の地ビールを総揃えして展示してあった。

「流氷ドラフト」や「監獄の黒」などの手前には、ビール用の麦やホップも展示されていた。