半坪ビオトープの日記

潮岬、望楼の芝


串本町の太平洋に面する潮岬は陸繋島であり、本州とは串本市街が位置する砂州で結ばれている。潮岬の先端は、約10万平方メートルの大芝生が広がる。昔、海軍の望楼(物見櫓)があったところで、望楼の芝と呼ばれる。ここを見下ろすように潮岬観光タワーが建っている。海抜100mのタワーからは、360度の展望を楽しむことができ、眼下には潮岬灯台と望楼の芝、遥か彼方には丸みを帯びた太平洋の水平線、晴れた日には遠く那智山の山並みも見えるという。

潮岬は本州の最南端に位置するので、展望台の手前には「本州最南端」の碑がある。

展望台から潮岬の最先端を眺めると、大きな岩場のクレ崎が突き出ているのが見える。展望台までの望楼の芝は、標高60〜80mの平坦な隆起海蝕台地で、展望台下の海岸部は40mを越す海食崖となっている。大きな岩場のクレ崎は、磯釣りのメッカにもなっている。

クレ崎の右手(西)には荒々しい岩場が続き、その崎には潮岬の灯台があるのだが、木々に隠れて見えない。潮岬灯台は、慶応2年(1866)イギリスなど4カ国と締結した改税約書(江戸協約)に基づき国内に建設された8つの灯台の一つで、明治6年(1873)に本点灯され、5年後に石造に改築された。

黒潮が洗う串本町の沿岸地域は、世界最北限のテーブル珊瑚をはじめ、多種多様のサンゴや魚など美しい海中景観をなしている。それにしても潮岬にはひっきりなしに大波が打ち寄せ、大きな波しぶきが上がる。ここは日本有数の台風銀座であり、台風の位置を表す指標にされることが多い。

クレ崎の左手(東)には岩礁が海に点在して荒々しい磯浜となっている。その向こうには浪ノ浦を囲んで南に伸びるコマキノ鼻やマキ崎が見える。

展望台の周りにも遊歩道があり、もう一つの本州最南端の石碑が見つかった。

展望台の手前には、2014年7月に開館した「潮風の休憩所」があり、潮岬の特徴ある台地(ジオサイト)や自然、ラムサール条約湿地に登録されている串本の海などを紹介している。

潮風の休憩所の入口左手には、下村海南(宏)の胸像や歌碑などが移設されている。和歌山県出身の下村宏は、NHK会長を経て、終戦時の鈴木貫太郎内閣の国務大臣・情報局総裁を務めた。玉音放送を企画・録音した人物として知られる。
佐々木信綱門下の歌人でもある。「春寒み 野飼の牛も見えなくに 潮の岬は 雨けむらへり」

館内では、白蝶貝などの貝類標本や、木曜島での白蝶貝採取関連資料も数多く展示されている。

串本町出身者らが明治から昭和にかけ、オーストラリア北部の木曜島を中心に行っていた白蝶貝採取用の潜水ヘルメットや、白蝶貝でできた装飾品なども展示されている。

太平洋に面した展望室には、古座組捕鯨絵図が展示され、様々な捕鯨船の一覧、古座浦鯨方六鯨之図なども見ることができ、昔の捕鯨の様子がわかるようになっている。潮岬沖は鯨が多く接近するところで、むかしから鯨漁が盛んであった。明治以降は、大島港を基地にして近代捕鯨が昭和37年(1962)まで行われていた。今は観光用のホエール・ウォッチングの船が、串本や大島から出ている。