半坪ビオトープの日記

安達太良山、山頂


やがてナナカマドなどの木々の彼方に、安達太良山の山頂が望まれるようになった。

山頂に近づくと森林限界を超えて樹木がなくなり、急に視界が開ける。岩がゴロゴロとむき出しになった山頂の岩峰(通称「乳首」)に登山者が上り詰める姿が見える。右には牛の背と呼ばれる稜線が北に伸びている。
安達太良山は、高村光太郎智恵子抄に出てくる。「智恵子は東京に空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ。・・・・・智恵子は遠くを見ながら言ふ。阿多多羅山の山之上に 毎日出てゐる青い空が 智恵子のほんとの空だといふ。あどけない空の話である。」

牛の背の先には、先ほど尖峰と見えた鉄山(1709m)が認められ、さらにその先に安達太良山連邦最高峰の箕輪山(1728m)がはっきりしない山容を見せている。

安達太良山(1700m)は、日本百名山、花の百名山に選定されている活火山で、数万年前まではマグマ噴出を繰り返す活発な火山であったが徐々に沈静化した。約2400年前の噴火の際のマグマ噴出以降は、時折、マグマ水蒸気爆発を繰り返す程度で、現在の噴火警戒レベルは1である。

あと一息の岩峰には左右から登れるが、右手は下りる人が多いので左手から登った。

山頂の岩峰にコメバツガザクラ(Arcterica nana)の花が咲き終わった姿を見つけた。北海道、本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の砂礫地、岩隙に生える常緑小低木で、高さは5〜10cmになる。葉は3枚輪生し、革質で長楕円形。長さ5〜10mm、幅3〜5mmになる。枝先に白色で壺型の花を3個つける。

安達太良山山頂から西を眺めると、牛の背から分岐した稜線が伸びた先に船明神山(1667m)が大きな山容を見せ、その左奥には磐梯山(1816m)が聳え、右の彼方には雪を冠った飯豊連峰(最高峰=大日岳2128m)がかすかに認められた。

牛の背の先の鉄山へ続く稜線の左=西側のガレ場、船明神山の北側、いわゆる沼ノ平は、平成9年(1997)有毒火山ガスで4人の死者を出した遭難事故以来、現在もガスを噴出していて立ち入り禁止となっている。

安達太良山の北の稜線、いわゆる牛の背の先には、鉄山と箕輪山が重なっていて、さらにその奥左手には東吾妻山(1975m)から西吾妻山(2035m)へと連なる吾妻連峰が眺められる。