半坪ビオトープの日記


春はスミレ(菫)の季節で、3月からいろいろなスミレが咲いている。スミレ科スミレ属は世界で450種ほど知られ、日本にも60種近く自生している。亜種や変種、自然雑種を含めると200種ともいわれ、微妙な違いを判別することは素人には難しい。
この花が属名でなく種としてのスミレ(Viora mandshurica) で、千島、日本、朝鮮半島、中国、ウスリーに分布し、種名のマンシュリカ満州に由来する。日当たりのよい野原や道端に生える。
スミレの語源は、墨入れ(墨壺)、隅入(隅取紙)など諸説あるが、明治の本草学者山本章夫による、「摘まれる→つみれ→スミレ」の転化説を採りたい。

スミレによく似たこの花は、ミョウジンスミレ(明神菫)といって、スミレの変種とされる。スミレの花の中心部が少し白くなるのに比べ、中心部ほど紫色が濃くなる特徴がある。箱根の明神ケ岳で発見されて命名されたが、全国に自生しスミレと混在する。

このキリガミネスミレ(霧ヶ峰菫)は、スミレと分布がほぼ重なるシロスミレ(V. patrinii) との雑種で、高原の草地では6月上旬前後に咲く。
スミレが古くから摘まれたことは万葉集の次の歌からも知られる。
春の野にすみれ摘みにと来しわれそ 野をなつかしみ一夜寝にける 
                             山部赤人(巻八-1424)
・・・春の野にすみれを摘むと白妙の 袖折り返し紅の 赤裳裾引き乙女らは 思い乱れて君待つと うら戀ひすなり心ぐし・・・ 大伴池主(巻十七-3973)
万葉時代のスミレ摘みは食用か染料用か不明だが、スミレは今でも山菜として利用される。葉は天ぷらにあるいは茹でておひたしや和え物にし、花は酢の物や椀だねにする。
何に使ったかは別にして、万葉の野にすみれを摘む万葉人の姿が、これらのスミレの花の奥に思い浮かべられれば幸いである。