スペイン最後の観光地は、マドリードから北西約100km、標高1000mにある城塞都市セゴビア。15世紀にはカスティーリャ王国の中心として重要な役割を果たした。町の南にあるバスターミナルから北西にあるローマ水道橋を目指してアクエドゥクト通りを歩き始めると、すぐ左手にサン・ミリャン教会(Iglesia de San Millán)がある。アラゴン王アルフォンソ1世によって12世紀(1111〜24)に建てられた、セゴビアで最も古い教会の一つである。
美しい柱頭を持つ外部の回廊は、ロマネスク様式の傑作とされる。
内部は見られなかったが、案内板によると古めかしく厳かな雰囲気が読み取れる。
なおも進むと右手にサン・クレメンテ教会(Iglesia de San Clemente)がある。12〜13世紀に建てられた一身廊の教会で、13世紀の壁画がある。このあたりから、前方に水道橋が見え始める。
なおも進むと、通りを横切るようにローマ水道橋が高くそびえてくる。中央の橋脚柱には聖母マリア像が設けられている。
紀元前80年にセゴビアを制圧して以降、ローマ帝国はセゴビアの都市整備に力を入れたが、その一環で建設されたのがこの水道橋である。セゴビア旧市街はかなり急峻で独立した丘上にあるため、生活用水の供給が難問だった。そこで18km北のフリオ川を水源とし、セゴビア旧市街と同じ高さの水道橋を作り導水路とした。
この水道橋はローマ時代以降も使用されていたが、その後、イスラム教徒が占領し、11世紀後期に撤退する際、重要部のアーチ35個を破壊したため使用不能となった。その後15世紀末に、カスティーリャ王国の女王イサベル1世とアラゴンのフェルナンド2世のカトリック両王により修復され、現存の姿になり19世紀末まで水を供給してきた。1985年、「セゴビア旧市街と水道橋」として世界文化遺産に登録されている。
ローマ水道橋の全長は813m、横幅は2.4m、最高部の高さは28.5m、128の2層アーチを持ち、花崗岩で作られた橋は石自体の重みで固定され、釘などの接合材は一切使用されていないというから驚きである。あまりの精度・技術の高さから、「悪魔」が一夜で作ったという伝説もある。水道橋の北西の丘陵上に旧市街が広がるが、橋脚柱脇の石段を登りつめると、展望台に出る。
展望台から南を見下ろすと、観光客が集まるアソゲホ広場(Pl. del Azoguejo)にはバスが多数見受けられる。
水道橋の西を眺めると、高い城壁によって旧市街が囲まれていて、セゴビアが城塞都市であることを示している。尖塔をもつ建物は、「精神の演習の家(Casa de Ejercicios Seminario)」という教会施設である。
旧市街の中心にあるカテドラルに向かうと、ファンブラホ通りにあるサン・マルティン教会(Iglesia de San Martín)の前に出る。12世紀に建てられたロマネスク様式の教会だが、中央の尖塔のみ14世紀にバロック様式に差し替えられている。
カテドラル(セゴビア大聖堂)の近くにサン・ミゲル教会(Iglesia de San Miguel)がある。スペイン王国成立の中心人物・イサベル女王が戴冠式を行った教会である。