昼食後、旧市街の入り口にあるサンタクルス美術館に入る。この美術館は、マドリードのプラド美術館の姉妹美術館で、エルグレコの22点の作品を始め多くの絵画が所蔵・展示されている。ファサードはプラテレスコ様式(スペインのルネサンス様式)の美しい彫刻が施され、館内には建築家のアロンソ・デ・コバルビアスが手がけた階段や手すり、アーチの彫刻などが見られる。
展示室は3つあり、右手の第一室はローマ、西ゴート、ムデハル文化など考古学を含む部屋。鉄格子と格子扉で仕切られた正面の第二室は、エル・グレコをはじめとした16〜17世紀に活躍したトレドの重要な画家の絵画が飾られる部屋。左手の第三室は、大衆文化や地元の工芸品などの部屋となっている。
エル・グレコ(El Greco、1541-1614)は、現在はギリシア領クレタ島の出身で、本名はドメニコス・テオトコプーロスという。スペイン来訪前にイタリアにいたためイタリア語で「ギリシア人」を意味するグレコに、スペイン語の男性定冠詞エルがついて、通称エル・グレコと呼ばれる。しかし晩年に至るまで自身の作品にはギリシア語の本名でサインをしていた。20代後半にヴェネツィアからローマへ渡り、1577年ごろにスペインに来ている。以後、生涯をトレドで暮らし、墓もトレドにある。
これは10世紀の『Virgen de la Piedad(慈悲の聖母=ピエタ)』。作者はアノニマスつまり作者不明である。
こちらは『キリストと聖ペテロ、マグダラのマリアたち』。17世紀初頭のアレハンドロ・セミノというトレドの画家の作品である。
こちらは『La Sagrada Familia(聖家族)』。Jose de Ribera(ホセ・デ・リベーラ)という17世紀のValenciaの画家の作品である。リベーラは若くしてイタリアに渡り、生涯の大半をナポリで過ごし帰国することはなかったそうだ。
いよいよ正面再奥の柵に囲まれたところにエル・グレコの作品が集められている。中央の大作は、『Retablo de La Inmaculada Concepción(無原罪のお宿り)1608-13』。数ある『無原罪のお宿り』の中でも最晩年の作品。
その左手には、エル・グレコの『La Sagrada Familia(聖家族)1595』がある。
こちらは、エル・グレコの『San Juan Bautista y San Juan Evangelista( 洗礼者ヨハネと福音伝道者ヨハネ )1600-10』。
こちらは、エル・グレコの『La Inmaculada Concepción vista por San Juan Evangelista(福音伝道者ヨハネのいる無原罪のお宿り)1595』。
こちらは、16世紀のトレドの画家Juan Correa de Vivarの『Martirio de San Andrés(聖アンドリュー殉教)1540-45』。
こちらは、16世紀の画家Maestro de Sijenaの『La Ascensión(聖母被昇天)』。
中庭はオリーブやニシキギなどの植栽で綺麗に手入れされていて、中庭を囲む回廊のアーチも美しい建築で心が和む。
サンタクルス美術館を後にしてトレド駅に戻る途中、タホ川に架かるアルカンタラ橋の向こうの丘に古城のような建物が見えた。古城を改装した1泊約10ユーロのユースホステルである。景色は良さそうだが、旧市街見物や買い物には不便そうだ。
アルカンタラ橋からタホ川を北方向に見下ろすと、トレド駅へ戻る道路の下に遊歩道があり、アルカンタラ橋を見上げるための展望台もあった。その先の橋は、駅からバスで旧市街に北から入る時に渡るアサルキエル橋である。