半坪ビオトープの日記

龍河洞珍鳥センター


高低差60m、行程4km、30分弱の洞窟探勝を終えて外に出ると、標高322mの三宝山の表示があり、そこから下に自然植物園が始まっている。右には漂白の歌人とも呼ばれた吉井勇の歌碑が立つ。吉井勇は「ゴンドラの唄」の作詞家で知られ、明治・大正・昭和を生きた歌人で、何度も高知に住んだことがあり、龍河洞にも何回も訪れている。
「絶え間なく石したたりてあるほどに 百千劫はいつか経にけむ」
吉井 勇

この植物はトウダイグサ科のヤマアイ(Mercurialis leiocarpa)である。本州、四国、九州、沖縄の山地の林内に自生する多年草で、タデ科の藍が渡来するまで古代の藍色染料として知られていた。万葉集などにも多く歌が詠まれ、今でも宮中儀式の大嘗祭では、石清水八幡宮に自生する山藍で染めた小忌衣(おみごろも)を着用するという。

こちらのねじれた木は、バラ科サクラ属のバクチノキ(Prunus zippeliana)である。関東以西の本州、四国、九州、沖縄の主に沿海地に生える常緑高木で、灰褐色の樹皮が鱗片状に剥がれると紅黄色の幹肌を現す。名の由来は、これを博打に負けて衣を剥がされるのに例えたものである。別名、ビランジュ(毘蘭樹)という。昔、葉を蒸留して「杏仁水(ばくち水)」を作り、咳止め薬として使われた。

こちらの大きな葉をつけているのは、サトイモ科テンナンショウ属のムサシアブミ(Arisaema ringens)である。関東以西〜沖縄の海岸に近いやや湿った林内に生える多年草。葉は2個つき、小葉は3個。葉柄は高さ15〜30cm。葉柄より短い偽茎をだし、仏炎苞に包まれた肉穂花序をつける。仏炎苞は暗紫色から緑色まで変化が多く、白い筋がある。筒部は長さ4〜7cmで、口辺部は耳状にはりだし、舷部は袋状に巻き込む。花序の付属体は白い棒状で、花期は3〜5月。テンナンショウ属の中では、広い葉が特に目立つ。

自然植物園が終わると、龍河洞博物館に突き当たる、館内には、龍河洞の中から発見された弥生時代の土器などの出土品、鍾乳石や石筍、洞内を中心に集めた動植物標本などが展示されている。博物館の前庭には、龍河洞を再発見した山内浩の銅像が立っている。山内浩は、龍河洞の研究を出発点として日本の洞窟学を打ち立て、ケービング(洞窟探検)を科学スポーツとして確立した先駆者である。

博物館のすぐ下には、龍河洞珍鳥センターがある。高知県特産のオナガドリをはじめ風変わりな特殊な鶏を集めている。この鶏は高知県で作られた「土佐ジロー」という卵肉兼用品種で、高知県特産の土佐地鶏の雄と、アメリカ原産のロードアイランドレッドの雌とを人工授精で交配して作られた。

こちらは、特別天然記念物に指定されている高知県原産のオナガドリである。

尾長鶏は鳥類最長の尾羽を持っており、雄は尾羽が換羽しないため一生伸び続けて10m以上にもなる。地上で普通に飼うと尾羽が地面に擦れて傷ついたり抜け落ちたりするため、縦長の専用の箱で飼育されている。

オナガドリの他にも高知県原産の天然記念物である大軍鶏東天紅鶉矮鶏うずらちゃぼ)など、いろいろな鶏が飼育されている。左の鶏は、高知県原産の天然記念物である簑曳矮鶏(みのひきちゃぼ)。真ん中の鶏は、高知県宿毛市の地鶏とされる宮地鶏である。右の鶏は、高知県原産の天然記念物である土佐小地鶏である。