半坪ビオトープの日記

青柳家と小田野直武


柳家の庭に小田野直武像がある。青柳家と姻戚関係にある小田野直武は、鉱山開発のため秋田藩に招かれていた平賀源内に師事し西洋画法の手ほどきを受け、源内専属の取次役として江戸に出向き、杉田玄白等による「解体新書」の挿絵を描いて、その名を高めた。西洋の陰影法を取り入れ、後の洋画界に大きな影響を与えた秋田蘭画は、小田野直武と秋田藩士・佐竹義敦によって完成された。

敷地の北東の奥には、秋田郷土館が建っている。雪国ならではの頑丈な造りの農家を移築し、昔の農村の暮らしぶりを今に伝える。角館の伝統工芸「イタヤ細工」と「桜皮細工」の実演もあり、分厚い夜着(掛布団)も展示されている。

二階には「戦史の部屋」として青柳家ゆかりの人たちの遺品や軍服などの戦史資料が展示されている。

細長い堀を越えた主屋の裏手辺りに、武家道具館が建っている。土蔵を利用した館内には、青柳家に代々伝わる文献書籍や角館の雛人形などの節句人形、歌舞伎や縁起物のあでやかな押絵などが並んでいる。

さらに角館発祥の楢岡焼や白岩焼、美しい大きな絵皿など、当時の武士の生活様式を伝える武家道具がずらりと展示されている。

南東にある企画展示室では、「写された幕末」として、薩長土肥の志士たちの若き日の集合写真や江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜など、珍しい写真がいろいろ展示されていて興味深い。

企画展示室の西には、ハイカラ館が建っている。1階は小田野直武が東北に初めて持ち帰った南番茶(コーヒー)が自慢の喫茶室だが、2階は平賀源内、小田野直武など角館ゆかりの先人の先取的思想とハイカラ思考を受継ぐアンティーミュージアムとなっている。こちらは、直武が描いた解体新書の解体図と、参考書として活用したとされるトーマス・バルトリンの解剖書(1669)との内部比較である。当時の解体書としては、ターヘル・アナトミアがよく知られるが、バルトリン解剖書は日本では九州大学医学部と青柳家でしか確認されていない。

ほかにも珍しい時計や貴重な写真機、蓄音機などが数百点も展示されている。とりわけ草創期のエジソン蝋管式蓄音機をはじめとする、蓄音機の発達が概観できる逸品の数々は、全国屈指のアンティークコレクションといえよう。

イカラ館の近くには、青柳家邸内社がある。祭神として八幡大神稲荷大神春日大神を祀っている。