半坪ビオトープの日記


山の鼻に近づいてきて、道端の咲き終わったミズバショウの間で、ようやくつぼみを膨らませてきていたのが、コバイケイソウ(Veratrum stamineum)である。中部地方以北と北海道の深山の湿地に生える多年草で、高さは1mほどになり、群生する様子は見事である。

木道の道端にたくさん咲いていたのは、ミヤマカラマツ(Thalictrum filamentosum var. tenerum)である。花の形はカラマツソウとよく似ているが、葉が大きく縁に鋸歯があり区別できる。日本各地の深山の林内などに生える多年草で、高さは30〜80cmになる。

こちらの白い花は、イチリンソウ属のサンリンソウ(Anemone stolonifera)である。中部地方以北と北海道の深山の林内に群生する多年草で、日本各地に分布するニリンソウ(A. flaccida)によく似ている。輪生する茎葉に、ニリンソウでは葉柄がないのに対して、本種では短い柄をもつ。またニリンソウに見られる葉の小さな斑が本種の葉にはない。尾瀬にはイチリンソウニリンソウサンリンソウが自生しているので、気を付けて見ていくとよいだろう。

この目立たない小さな花を咲かせているのは、ユキノシタ科のズダヤクシュ(Tiarella polyphylla)という。近畿地方以北の本州、四国、北海道の山地の林内に自生する多年草で、花期は6〜8月である。漢字で喘息薬種と書くように、喘息、咳止めの民間薬として古くから使われている。ズダとは木曽の方言である。

円錐状の総状花序に白い小花を密につけて咲いているのは、リョウブ属のリョウブ(Clethra barbinervis)である。高さは10m近くにもなる落葉小高木で、日本各地、中国などにも分布する。若葉は山菜とされるので、昔は飢饉の時の救荒植物として利用された。令法という名は、救荒植物として育て蓄えることを法で決められたからといわれるが、花序の形から「竜尾」が訛ったとの説もある。大きくなると、木肌が風変わりなので薄片を付けたままで床柱として使われもする。

山の鼻に向かう木道の左側には湿地帯が広がり、そこに鮮やかなラン科の花が咲いていた。テガタチドリによく似た、ノビネチドリ(Gymnadenia camtschatica)である。日本各地の山地や亜高山帯に生える多年草で、花期は5〜7月である。テガタチドリとの違いは、根が横に伸びることだが掘るわけにはいかない。しかし、葉の縁が波打つことが目立つ特徴なので、すぐ区別できる。