半坪ビオトープの日記


秋の彼岸が近くなるとヒガンバナ(Lycoris radiata) があちらこちらで咲きだす。古い農耕集落地に分布が集中するので、中国原産の帰化植物と考えられている。
アルカロイドのリコリンという猛毒成分が含まれ、中国では殺虫剤や殺鼠剤として利用された。日本でもモグラ除けとして田畑のあぜによく植えられた。
救荒時には幾度も水にさらして食用にもされたが、毒抜きが不十分だと死亡する。異名に死人花(しびとばな)、地獄花、剃刀花、狐花など千以上が知られ、国内で最も多くの名をもつ植物とされる。
万葉集の壱師花(いちしばな)がヒガンバナという説もある。別名の曼珠沙華マンジュシャゲ)は法華経などの仏典にあるが別の植物といわれ、江戸時代以前の古典や文献にはどういうわけか登場せず、蕪村の次の句が所見とされる。
曼珠沙華蘭に類いて狐鳴く 蕪村

ヒガンバナと姿が同じで黄色のこの花は、ショウキズイセン鍾馗水仙、L. aurea) という。日本南部から中国、東南アジアにかけて分布する。
鱗茎はヒガンバナよりやや大きく、花被片の幅も広い。

白いヒガンバナは、シロバナマンジュシャゲ(L. albiflora) という。中国原産の稔性種とショウキズイセンとの交雑種といわれる。
白色とはいっても淡黄色や淡桃色を帯びるものが多い。