半坪ビオトープの日記


アケビのように垣根に絡まり、アケビに似た実がなるこの花は、アケビ科ムベ属のムベ(郁子、Stauntonia hexaphylla) という。ストーントニアという属名は、アイルランドの医者で中国を旅したストーントンの名にちなむ。
関東以西の日本、台湾、中国、朝鮮半島南部に分布する、つる性常緑樹。樹形はアケビに似るが、光沢のある卵形の葉は大きく全体に硬い感じがする。別名にはトキワアケビ、ウベがある。
雌花と雄花があり、花弁はなく6個の萼片は反り返り、淡黄緑色で内側は暗紅紫色をしている。葉が7・5・3とつくので、造園界では縁起の良い木とされている。果実はアケビより一回り小さく、暗紫色に熟すがアケビのようには裂開しない。アケビと同じように果肉は甘いという。
果実のムベには次のような話がある。昔、天地天皇近江八幡近辺に行幸されたとき、長寿の秘訣というこの果実を食し、「むべ(宜)なるかな」と称賛したという。その後長く近江から皇室に献上され続けたといわれる。
「むべ(宜)」といえば、百人一首の次の歌が思い出される。これも宜(うべな)う「まさにそのとおり」の意味であるが。
吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむ (文屋康秀古今集