半坪ビオトープの日記

ダイトウチャ(大東茶)

ダイトウチャ(大東茶)は台湾産のタイワンツバキ属で、一重の中輪、平開咲き。蕾が数個から十個ほどかたまっていて順次咲くので、11月から4月まで花期が長い。園芸種としてかなり出回っているが、どうみても大柄な茶の花といったところ。
さて、椿の字を国字とするのは間違いのようだ。万葉集にはツバキを意味する言葉として、椿が3首、海石榴が5首(うち2首は地名の海石榴市でツバキチと読む)、都婆吉が1首、都婆伎が1首あるとされている。音はツバキ、字は椿と海石榴の二通りと考えられる。まず、中国では海外から来た植物に「海」をつけることが知られているので、海石榴は海外から来た石榴(ザクロ)に似た植物と命名されたのであろう。椿の漢字は日本に自生しないセンダン科チャンチンのことを指す。それゆえ春に咲く日本特産の花に独自に椿という字を作ったと考えたわけである。しかし植物学的に考証した人がいる。
その人の説によれば、チャンチンによく似たウルシ科植物にチャンチンモドキというものがあり、九州にも自生地があるという。果肉を除いたその実はツバキの実に似て混同もありうるし、発酵させて酒も造れるため長崎県の遺跡からも出土し、吉野ヶ里遺跡からはチャンチンモドキの材で作られた井戸が発掘されているという。チャンチンモドキは中国語で「香椿」と書くので中国でチャンチンの「椿」と混同されてチャンチンモドキを椿と誤表記されたと考えられるという。
第九回遣唐使の贈答品に海石榴油六斗とあり、日本の特産品としてかなり以前から中国にも自慢していたことが伺われる。
古代人が約束の言葉を交わすとき、ツ(唾)の神が出現すると信じられていて、ツバキと唾(つ、つばき)の関係について、つは唾の語幹であり、唾はつばきであると折口信夫が指摘しているそうだ。古来、海石榴市は歌垣として有名で、霊が宿るツ(唾)を吐いて約束したという。それゆえツバキの語源はツハキ(唾はき)が有力ということになろう。