半坪ビオトープの日記

大歩危・小歩危


四国山地を横切る吉野川中流域、高知県境に近い徳島県西部の峡谷、大歩危峡に大歩危小歩危景勝地がある。阿波池田から南下すると、最初に小歩危が現れる。上流の大歩危から清流が奇岩怪石の間をしぶきを上げながら流れ下る様が清々しい。

大歩危の地名の由来としては、大股で歩くと危険という漢字説が有名だが、昔から現在の漢字で表記していたわけではなく誤りである。「ほき、ほけ」は断崖を意味する古語であり、古語としての「ホキ」は渓流に臨んだ断崖を意味するとされる。「崩壊(ホケ)」とも書き、奇岩や怪石の多い土地を示す。この辺りが小歩危というが、ゆっくり鑑賞できる場所がないのが残念である。

エメラルドグリーンの渓谷は延々と続き、大歩危に近づくとラフティングのゴムボートが見下ろせた。渓谷美を間近で体験できるので、夏だけでなく通年、ラフティング・カヤックの愛好者を集め、大歩危峡遊覧船も百年以上の歴史があるという。

道端にはウツギの花がたくさん咲いていた。日本にはウツギの花が数種あり区別が難しいが、花のすぐ下の葉に軸がなく枝を巻いているので、マルバウツギ(Deutzia scabra)と思われる。本州の関東以西、四国、九州の山地に生え、高さは1.5mになる。

なかなか停車場所が見つからないが、なんとか路肩が空いているところに停めて吉野川を見下ろしてみる。傾斜が緩いせいかゆったり流れていて、小歩危ほど奇岩怪石は見当たらない。

ようやく大歩危峡を一望できるという「道の駅大歩危」に着いたが、すでに景勝地は過ぎているように見えた。地元の山城町には110ヶ所以上の場所に60種に及ぶ妖怪や憑き物の伝承が残されていて民俗学的に関心を呼んでいる。そのためここに妖怪屋敷や石の博物館もあるが、妖怪には興味がないのでテラスから景色を眺めるだけにした。

この辺りの地質は三波川帯に属し、8千万年〜6千万年前にできた変成岩類で構成されている。大歩危は砂質片岩及び黒色(泥質)片岩を主体としているが、変成岩中に礫質片岩が含まれることから、国の天然記念物に指定されている。