半坪ビオトープの日記

かずら橋


吉野川大歩危小歩危から祖谷トンネルを越えて祖谷谷に入る。祖谷川を遡って、祖谷のかずら(蔓)橋を見る。かずら橋は、山に自生するサルナシ(シラクチカズラ、Actinidia arguta)などの葛(蔓)を編んだ原始的な吊橋で、国の重要有形民俗文化財に指定されている。人専用の橋で、一方通行だがひっきりなしに観光客が渡っている。

祖谷のかずら橋は、古文書によるとかつて7ないし13の橋が存在したとされる。最古の正保3年(1646)の「阿波国図」にはかずら橋が7つ存在したと記録され、明暦3年(1657)「阿波国海陸度之の帳の写」の祖谷紀行には13のかずら橋があったとされる。

かずら橋の起源は、その昔、弘法大使が祖谷に来たとき困っている村民のために架けたとか、あるいは平家の落人がこの地に潜み、追手が迫ってもすぐ切り落とせるように葛を使って架設したとの伝説もあるが定かではない。この一帯は平家の隠れ里(隠田集落)として名高く、日本三大秘境を謳う地であり、山麓にへばりつくように住宅が点在する。

現在のかずら橋は長さ45m、幅2m、谷からの高さ14mで、日本三奇橋の一つである。安全のためワイヤーも使われており、かずらはワイヤーを包み込む装飾になっている。現在でも年間35万人の観光客が通るため老朽化が早く、3年に一度は架け替えられている。
橋床の「さな木」と呼ばれる丸太の隙間から川面が望めるが、目がくらむようで足がすくむ。

川床の下流では、川岸に多くの観光客が遊んでいるのが見える。

渡り終えた所からも、かずら橋の揺れる様子が手に取るように見える。誰もワイヤーがかずらで隠されているとは思いもよらないだろう。

時間があれば浅い河原で、のんびりくつろぐのがよいだろう。

祖谷川の右の苔むした崖には、涼しげな琵琶の滝が流れ落ちている。平家の落人達が古都の生活を偲び、琵琶を奏でつれづれを慰めあったと言い伝えられている、高さ50mの美しい滝である。

滝の近くの土産物屋では、ユキモチソウ(Arisaema sikokianum)が売られていた。近畿地方と四国の山地の林下に生えるテンナンショウ属の多年草で、付属体の頭部が丸くて餅のように白いことからこの名がついた。