半坪ビオトープの日記

『暁の寺』ワット・アルン

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暁の寺』ワット・アルン

ワット・プラケオと王宮はチャオプラヤ川の東岸に並ぶが、川の対岸(西岸)にはワット・アルンが建っている。アルンとは暁の意味であり、三島由紀夫の小説『暁の寺』の舞台ともなり、英語でTemple of Dawn と呼ばれるが、それが『暁の寺』の由来になったとされる。

ワットポー裏手のター・ティアン船着場から渡し船で行くのが普通だが、ホテルのあるトンローから、スカイトレインと地下鉄を乗り継いでサナーム・チャイ駅に行き、そこからタクシーを使ってワットアルンの西側に着いた。

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御堂(礼拝堂)

ワットアルン の入り口近くには、御堂(礼拝堂)がいくつかあり、堂内には金色に輝く大きな仏像があって、庶民が祈りを捧げる神聖な場であることがわかる。

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御堂(礼拝堂)の仏像

ラーマ2世により建立された本堂は、仏塔群とは離れた位置にあるので、見る時間がなくなってしまったが、この礼拝堂に安置されている仏像も本堂の仏像に劣らず荘厳な威容を誇っていた。

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大仏塔

ワット・アルンの最大の見所は、中心に聳えるバンコク様式の大仏塔。トウモロコシのような形をした大仏塔の高さは75m。これは創建時にあった高さ16mの仏塔をラーマ3世が改築したもの。台座の周囲は234mもあるという。大仏塔の周囲には4基の小仏塔が配され、須弥山を具現化している。

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大仏塔の急な階段

ワット・アルン の正式名称は、ワット・アルン・ラーテャワラーラームといい、第1級王室寺院でもある。双剣の記録は残っていないが、アユタヤ朝時代にはワット・マコークと称し、1767年のアユタヤ朝滅亡後、この地を掌握したタークシンにより修復され、ワット・ジェーンとしてトンブリー王朝の王宮寺院となった。のちのバンコク王朝(現チャクリー王朝)の創始者ラーマ1世は、トンブリー王朝時代の1779年にタークシン王の命を受け、ヴィエンチャンを攻略、戦利品としてエメラルド仏を持ち帰り、この寺院に安置した。1782年にバンコク王朝ができ、エメラルド寺院が建立されたので、エメラルド仏はそこに移された。1820年にラーマ2世によりヒンドゥー教の暁神アルーナから現在の名称が与えられ、ラーマ2世の菩提寺となった。大仏塔には急な階段がついており、上るとチャオプラヤー川やバンコク市街が見渡せる。

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大仏塔の石像

仏塔の表面は砕いた陶器の破片で装飾され、飾りつけられた無数の石像は、インドラ神とその乗り物である3つの頭を持つエーラーワン象(アイラヴァータ)を筆頭に、ガルーダ、鬼神のヤック、猿神のモック、キンナリ像など『ラーマキエン』に登場するものばかりだ。

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小仏塔

階段の上から見る小仏塔も、大仏塔とほとんど同じ作りをしていて、一回り小さいだけである。

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仏塔からの眺め

チャオプラヤー川の向こうにはワット・プラケオやワット・ポーの建物群も垣間見える。手前には船着場も見える。

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船着場から見るワット・アルン

ワット・アルンの船着場から振り返ると、ワット・アルンの大仏塔が大きく見える。

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ワット・プラケオやワット・ポーの建物群

チャオプラヤー川の向こうにはワット・プラケオやワット・ポーの建物群も垣間見える。手前には船着場も見える。

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チャオプラヤー川を行き来する水上バス

チャオプラヤー川に沿った寺院などの観光施設を行き来する水上バスも様々な種類があって頻繁にすれ違う。

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チャオプラヤー川から見る高層ビル群

バンコク市内には運河も張り巡らされており、水上タクシーや運河ボートなどいろいろな船が行き交っていて高層ビル群との対比も面白い。

 

路地裏の名店、ポークルアトゥアンほか

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路地裏の名店、ポークルアトゥアン

昼食には、バンコクの南西の町外れ、チャオプラヤー川沿いの巨大縁日、アジアティーク・ザ・リバーフロント近くの細い路地奥の食堂、B級グルメで名高いポークルアトゥアンをなんとか探し当てて入った。店の入り口近くにはいくつもプロパンガスの鍋が10以上並んでいる。ガス爆発の被害を少なくするため、台所は屋外に設けられている。これらの鍋の中で蒸されているスープの種類は15種類。創業50年というタイ中華の庶民的な店だ。

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ビーフのスープ

ガイダムという烏骨鶏のスープが120バーツ、そのほかのスープは一皿40〜50バーツという安さ。珍しい海苔のスープもあったが、まずは無難に、ビーフのスープを頼んだ。中華とタイの香辛料が微妙に絡み合い、しっかりと煮込まれていて美味しい。

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パットガパオ

次にパットガパオ。パットガパオムーは、唐辛子とニンニクと豚肉を炒めてナンプラーで味付け、最後に生バジルを絡める。豚肉を使うとパットガパオムー、鶏肉を使うとパットガパオガイという。目玉焼きはカイダオという。

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ヌア・プーパッポンカリー

こちらが自慢料理のヌア・プーパッポンカリー。プーパッポンカリーは普通、蟹の甲羅が乗っているが、蟹の身だけを使ってフワフワの卵でいためたのが、このヌア・プーパッポンカリーだ。

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パッカナームークロープ

最後にカイラン菜と揚げ豚肉の炒め物、パッカナームークロープ。タイではカイラン菜のことをカナーと呼ぶ。ラートカーオ(白米)をつけても50バーツと安い。他に人気のある料理は黄ニラと豆腐の炒め物、クイチャーイカオという。

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ハナチョウジとローレルカズラ

ここでいくつか、単発の写真を載せる。ここは、国立博物館の庭で見かけた石仏と草花。石仏は、鐘か鈴を持っているがその正体は不明。右手の細長く赤い花は、メキシコ原産のラッセリア属のハナチョウジ(Russelia equisetiformis)に違いない。日本でも沖縄や奄美など南西日本で育成されている園芸植物である。右上で大きな葉を広げているのは、アスプレニウム(チャセンシダ)属の熱帯原産のシダ植物で、日本の南西諸島にも生育するシマオオタニワタリ(Asplenium nidus)より一回り大きい。左手前の濃緑色の葉はソテツ属の植物で、日本の南西諸島にも自生する蘇鉄(Cycas revoluta)あるいはその近縁種であろう。右手前の藤色の花は、ツンベルギア属の花だが、タイおよびマレー半島原産のローレルカズラ(Thunbergia laurifolia)であろう。日本でも園芸植物として知られるベンガルヤハズカズラ(Thunbergia grandifolia)と花はよく似るが、葉の形が明らかに違う。ローレルカズラの葉は卵状披針形で、ベンガルヤハズカズラの葉は基部が心臓形で全体は長三角形から広披針形となっている。このローレルカズラの葉は斑入りで、花色も良いので園芸品種と思われる。

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茶色のネコ

このネコは、タイの名店レストラン「Gaa」の店先で見かけた茶色のネコ。他にも黒いネコを見かけた。タイといえばシャム猫をすぐ思いつくが、短い滞在のバンコクの街中では見かけなかった。シャム猫とは日本独自の名前で、海外ではサイミアーズ(Siamese)といい、最近タイネコという品種が出回るようになったが、それはオールドスタイルのシャム猫だという。

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BTSスカイトレイン

こちらはサイアム・スクエアバンコク・アート&カルチャー・センターBACC 向かいを走るBTSスカイトレイン。渋滞知らずの高架鉄道は便利で2路線あり、このサイアム駅で連絡している。他にタイ唯一の地下鉄MRTブルーラインがあり、地上へ出るとパープルラインとして郊外に延びている。高架鉄道との連絡はあるが、チケットの種類が違うところが難点である。

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地下鉄MRTの優先席の表示

電車の座席には日本と同じように優先席の表示がある。MRTにはこのように、僧侶、高齢者、妊婦、傷病者、子供のピクトグラムがある。BTSには僧侶優先席と一般優先席があり、そこには高齢者、妊婦、子供のピクトグラムがある。タイの僧侶優先席が別なのは、僧侶は戒律で女性に触れることを禁じられているからという。他に日本との違いは、タイでは子供が優先者になっていることで、日本では乳幼児連れが代わりに選ばれている。

 

ジム・トンプソン・ハウス

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ジム・トンプソン・ハウス

最後の日、若者で賑わうサイアム・スクエアの近く、バンコク芸術文化センターBACCの裏手にある、ジム・トンプソン・ハウスに行った。タイシルク王として名高いアメリカ人、ジム・トンプソン氏が1959年から8年間暮らしていた住居が博物館として公開されている。家の見学はガイドツアーのみ可能で、日本語ツアーもあるので時間を合わせたい。

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ジム・トンプソン・ハウスの庭

ジム・トンプソン氏は、第二次世界大戦中にタイに派遣され、終戦後も残ってタイシルクの事業化に貢献し、バンコクパタヤプーケットなどに多数の店舗を展開し、財を成した。チーク材を用いたタイの伝統的な建築や古美術コレクションの見学、緑や花々が美しい庭の散策など、都会のオアシス空間としても人気が高い。

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レッドジンジャー

この赤い花は、レッドジンジャー(red ginger)と通称されるアルピニア(ハナミョウガ)属のプルプラタ(Alpinia purpurata)。高さ4m、葉の長さ70cmになる東南アジア原産の大型種で、花は小さな白色だが、花序は長く穂状で苞が赤いため、花序全体が赤く見えて美しい。

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シルク繭

現在タイ国内には10万戸以上の養蚕農家があり、年間600トン以上のシルク繭が生産されている。そのうち500トン近くを使って国内のシルク布生産が行われている。世界中にオンラインショッピングを展開し、タイやシンガポールミャンマーに25店舗の直営店を持つ。

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古美術コレクション

かつては建築家を目指していたというジム・トンプソンは、チーク材を始め、アユタヤなどの田舎で廃墟となっていた家を解体して手に入れた資材で家を作った。その家は6棟からなり、客間や寝室、ダイニング、書斎などが見学できる。

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アンティークな調度品

格調高いシャンデリアやアンティークな調度品など、東南アジア各地から収集した古美術の彫刻や陶磁器などが数多く展示されている。

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古美術の彫刻

ジム・トンプソンは東南アジア各地で収集活動を行なっていたが、1967年、休暇で訪れたマレーシアのキャメロンハイランド高原で、忽然と姿を消すという謎の失踪事件に巻き込まれた。地元の警察や軍の捜索も実らず、今だに遺留品一つ発見されていない。

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黄金色の仏像

この黄金色の仏像も見たことがないような形をしている。下半身の衣が燃え立つような独特の意匠である。

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シュエチドウ(テキスタイル)

タイ北部のタイプアン族には、代々伝わるシュエチドウ(shwe chi doe )というテキスタイルの織物の習慣があり、ここにもいくつか展示されている。この作品は、ブッダの生活から題材をとっているとされる。

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チーク材の彫刻

タイでは寺院の扉などにチーク材の彫刻が施された例が多く見かけられ、ここにもいくつか集められている。

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ベニゲンペイカズラ

庭に咲いていたこの花は、クサギ属のベニゲンペイカズラ(Clerodendrum × speciosum)という園芸品種。ゲンペイクサギ(C. thomsoniae)とスプレンデンス(C. splendens)の交配種。スプレンデンスの深紅色とゲンペイクサギの紅白の花冠の色が交錯して多彩な花模様となる。

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シルク製品のショップやレストラン

敷地の右側にはジム・トンプソンが暮らしていた住居があるが、左手にはシルク製品のショップやレストランが建っている。

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ヒンドゥーの祠

出入口脇にはヒンドゥーの祠があり、綺麗な花飾りが供えられている。ヒンドゥー神ブラフマー(梵天)を祀っていると思われる。オレンジ色の花飾りは伝統的なマリーゴールドの花飾りである。

現代タイ料理「Saawaan」

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現代タイ料理「Saawaan」、キャビア

二日目のディナーは、オープンして一年足らずで2019年にミシュラン1つ星を取得した、現代タイ料理で有名な「Saawaan」。サワンとは、タイ語で天国を意味する。タイ人の女性シェフは、Sujira Aom Pongmorn氏。タイの食材を使い、伝統的なタイ料理の魅力を残しながら、斬新なタイ料理を提供することで一躍注目されるようになった。まずは、メニューに載っていない前菜。キャビアにコブミカンの実を削ったものがふりかけられている。

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ガラスの壺の中のウニ

殻のままのウニが入っている大きなガラスの壺をスタッフが持ってきた。中にはサンゴのかけらか白い石状のものが敷き詰められて海の底を演出している。

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ウニ

日本産のムラサキウニだろうか、アクセントにミントの葉が添えられている。

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ゴイプラー

ゴイプラーというココナツ入り蒸し米をバナナの葉に包み焼いたものに、ディップマンプーマーという蟹味噌(クラブバター)をつけて食べる。

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黒豚にキュウリのピクルス

こちらはFERMENTED(発酵料理)。黒豚にキュウリのピクルス。

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ビーフのスープ

バイヤナンの葉で包まれたビーフのスープ。

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ミヤンバイチャー

こちらはミヤンバイチャー。キンマの葉にバジルとマッシュルームのペーストを巻いて食べる。ミヤンカムという、屋台料理でも喜ばれる庶民的な一品を優雅に提供している。

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サトー豆(臭い豆)

これはサトー豆(臭い豆)と呼ばれる、ネジレフサマメノキの実。

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サムート・ソンクラーム

サムート・ソンクラームという蟹の肉に、サトー豆の実とコブミカンの葉をミルで挽いた粉をかけて食べる。豆とミルを用意して、目の前で粉にする演出が心憎い。

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ウズラを甕から出す

これもスタッフがウズラを甕から出すパフォーマンス。

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焼いたウズラ

料理はCHARCOALED(焼き物)。焼いたウズラにトマトソースをかける。右は青パパイヤだろうか、マコモダケのように見えるが。どちらにしても飾りの色合いが素敵だ。

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ローストチキンと焼きナス

こちらはローストチキンと焼きナスにゆで卵。ソースはPienuts入りのパナンレッドカレー(Panang Curry)。ジャスミンライスが添えられている。

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サマリンドのシャーベット

こちらのデザートは、サマリンドのシャーベットに、ジャスミンメレンゲのスティックが乗せられている。

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ミニバナナとマンゴーのフルーツデザート

これはGluay Nam Waというミニバナナとマンゴーのフルーツデザート。泡だてたココナツミルクの中に浮かぶように置かれている。今まで見たことがある食材や見たこともない食材を自在に調理して、なおかつ客を喜ばせるパフォーマンスが満載の料理に十分満足した。

 

国立博物館(National Museum)

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国立博物館(National Museum),

午後は国立博物館(National Museum)を見学した。開館はラーマ5世時代の1874年で、当初は王宮内にあったが、1887年に現在地に移転した。タイ最大の博物館で、先史時代からのタイ国の歴史を包括する文化遺産の数々、6世紀後半から現チャクリー王朝までの宗教美術品などが美しく展示されている。大きな本館に入ると王族ゆかりの伝統工芸品が所狭しと展示されている。これはタイの古典楽器類。華麗な装飾も施されている。

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人形劇に使われる人形

こちらは「フン・ラコーン・レック」というタイ伝統芸能の操り人形劇に使われる人形。この人形劇はユネスコ無形文化遺産に指定されている。人形一体に操り師が3人掛りで操る。今でも上演しているサコーン・ナータシン劇団はいくつもレパートリーを持っているが、やはり代表的なのは古代ヒンドゥー叙事詩ラーマーヤナ、いわゆるラーマーキエンで、現代美術館でも見たように、男性・女性・悪魔・猿の4種の人形によって演じられる。

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ベンジャロン焼きの食器

靴を脱いで2階に上がると、食器や衣服、指輪から冠に至る王の身の回り品がたくさん展示されている。17世紀前後、アユタヤ王朝時代後期に、王室専用高級伝統磁器として発展したベンジャロン焼きの食器は、現代にも続く宮廷料理にも使われているという。ベンジャロンとは、古代サンスクリット語の5を表す「ベンジャ」と、色を表す「ロン」に由来し、5色というより「多色塗り」を意味している。

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象牙製の象鞍

国王などが象に騎乗するためには、巨大な象の背に象鞍という座面を設けてその上に座る。幅広い座面の欄干や座面を支える支柱などは象牙製で、流麗繊細な彫刻が施されている。

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螺鈿細工の調度品

こちらの調度品は宴会用の品だろうか。繊細華麗な螺鈿細工が施されている。

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螺鈿細工の調度品

こちらの調度品は何を入れる箱だろうか。こちらも繊細華麗な螺鈿細工が施されている。

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象鞍と象

先ほど見た象鞍が、巨大な象の背にくくりつけられている。

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戦象を含む軍隊の行進

これは戦象を含む軍隊の行進の様子の模型である。古代世界では戦象は最強の重戦車だった。戦象が突進して歩兵部隊を蹴散らし、踏み潰し、背に乗った象兵から弓矢槍の攻撃も受けたら逃げるしかない。

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仏教遺物

現在のタイの国土には、タイ族の国が興る以前、インド文明を取り入れながら独自の文化を育んだ国々があった。六世紀後半成立とされるドヴァーラヴァティー国、シュリーヴィジャヤ国、扶南国、アンコール朝、ハリブンチャイ国など。そしてタイ族のスコタイ王朝、アユタヤ王朝、現チャクリー王朝まで続く、各地の遺跡から出土する仏像などの仏教遺物が展示されている。

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アユタヤ時代の四面仏像

14世紀半ばから400年もの長きにわたって国際交易国家として繁栄したアユタヤ王朝時代は、上座仏教を国教とする一方、インド的な儀礼や位階制度が整えられるなど集権化が進められた。これはアユタヤ時代の四面仏像のレリーフ

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仏頭

仏頭も多数展示されている。厳かではあるが、日本の仏頭とはいささか趣が違うように感じる。

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千体仏と釈迦のレリーフ

左の石板には細かい千体仏が貼り付けられている。右上には釈迦の立ち姿、右下には釈迦の涅槃の姿のレリーフが展示されている。かなり古い時代のものと思われる。

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葬儀用の巨大な山車

王家の葬儀に関する広い展示場には、金ピカに飾られた葬儀用の巨大な山車や棺が安置されている。これはラーマ1世(1782-1809在位)が造らせた、王の火葬の儀式に使われる木彫りの山車で、高さ11.2m、長さ15.3mで、約200人の兵隊が王の遺体をエメラルド宮殿からサナムルアン公園に運んだ。王の遺体を座ったままで運ぶことが代々伝わるしきたりだったが、プミポン国王の母(ソムデットヤー)の葬儀以後は、寝た状態で運ばれるようになったという。

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プミポン元国王の棺

プミポン元国王の棺も保管されている。

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葬儀用の巨大な山車

この葬儀に関する展示場は保管庫も兼ねているので、巨大な山車はいくつも並べられている。

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ブッダイサワン礼拝堂のシヒン仏

最後に、本館手前右側(北)にあるブッダイサワン礼拝堂へ。元々は1795年に副王宮専用の礼拝堂として建てられたものである。高い祭壇の上には、国の守護仏として崇拝されているシヒン仏(獅子仏、13世紀頃の青銅製)が祀られている。堂内の壁には、仏陀の生涯説話が数十枚の壁画で描かれている。その上、四方の壁一面は、千体仏だろうか、おびただしい数の仏画で埋め尽くされている。

 

イスラム料理とイーサーン(タイ東北)料理

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イスラム料理店、Karimu Roti Matabaのプレーンロティ

昼食はチャオプラヤー川沿いのプラスメーン砦の近くにある、大衆に愛されている有名なイスラム料理店、Karimu Roti Matabaにする。ロティ(Roti)は、インドやパキスタン、アフリカ諸国のほか、タイなどの東南アジアでも一般的な、全粒粉を使った無発酵パンである。日本ではインドカレーというと、ナンを一緒に食べるイメージが強いが、実際にはインドではナンではなくロティやチャパティを食べるのが一般的である。プレーンロティは約50円と安い。

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マタバ(Mataba)

マタバ(Mataba)は、タイ南部を中心によく食べられているイスラム風ロティで、カレー粉で味をつけた鶏肉や野菜などの具をロティに包んだものである。アーチャートと呼ばれる、唐辛子と砂糖を入れたキュウリの甘いピクルスを付け合わせとして食べる。

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チキン・グリーンカレー

ロティもマタバもタイでは屋台で気軽に食べられ、様々なカレーと一緒に売られていることが多い。これはチキン・グリーンカレー。チキンはほとんど食べてしまっている。

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チキン入りマッサマンカレー

こちらも残念ながら少ししか残っていないが、レッドカレーに見えるのは、チキン入りマッサマンカレー

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チャーエン(タイ風ミルクティ)

バングラデシュ人のカリム・アブダル氏は、1943年にこの店を創業したが、1997年に97歳で亡くなっていて、スタッフが継いでいる。アルコール類はなく、カップの氷とセットのドリンクの小ボトルには、カリム・アブダル氏のロゴマークがついている。チャーエン(タイ風ミルクティ)などドリンクはどれも約100円。

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シーフードのマタバ

マタバの具材にはチキンだけでなく、ビーフやマトン、シーフード、フィッシュなどがある。これはシーフードのマタバ。

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ビーフのマタバ

これはビーフのマタバ。他にもチョコバナナロティなどスィーツ系ロティも各種揃っている。

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イーサーン(タイ東北)料理専門店、サバイチャイのビール

前日の夕食は、ホテル近くのイーサーン(タイ東北)料理専門店、サバイチャイ(Sabaijai)にした。タイ東北は独特な食文化があり、バンコクで働く出稼ぎ者の郷土料理・イーサーン料理がタイの代表料理にもなっている。ビールは、chang。タイ・ビバレッジ製造で、シェアは約半数で国内トップ。チャーンとはタイ語で象を意味し、ロゴは白象である。アルコール度が6.4%と高い。しかし、日本で輸入しているのは5%のタイプである。

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青パパイヤサラダ、ソムタム・タイ

ソムタム・タイは、イサーン風青パパイヤサラダで、青パパイヤのスライスやトマトをナンプラーやニンニク、ライム、ココナツシュガー、干しエビなどと一緒に叩いて和える。ソム(酸っぱい)タム(叩く)の中でも、ソムタム・タイは最もマイルドな味である。

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トムカーカイ(Tom Kha Kai)

こちらはトムカーカイ(Tom Kha Kai)。トムヤムのスープをベースにココナツミルクたっぷりで仕上げている。カイ(チキン)との相性がいい。

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カイヤーン(鶏の炭火焼)

サバイチャイの代表料理・カイヤーンは鶏の炭火焼。秘伝のタレに漬け込んだ丸鶏を遠火で炙り焼きにする。カリカリの皮とジューシーな肉が美味しい。2種のタレはかなり辛い。

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ティラピアの丸唐揚げ(Deep Fried Red Tilapia fish)

ティラピアの丸唐揚げ(Deep Fried Red Tilapia fish)。タイでは現在、広くティラピアの養殖が行われているが、1960年代、現明仁上皇が皇太子時代にタイ国王にティラピア50尾を送り「ティラピアの養殖」を提案したことが始まりとされ、両国の友好の証となっていることはタイ国民によく知られている。タイではプラーニン(黒い魚)と呼ばれていたが、今や赤ティラピアとも呼ばれるナイルティラピアが多く養殖されている。

王宮(Grand Palace)

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王宮(Grand Palace)への出口

ワット・プラケオを囲む屋根付きの回廊には、タイの古典文学『ラーマキエン』の壁画が描かれている。ワット・プラケオに入ってすぐ右手(南)に王宮(Grand Palace)への出口がある。門の前には大きな鉄棒を構えて大きなヤック像が仁王立ちしている。寺院を守護する魔除けの役目を担っている。

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ヤック像

ヤック像の鉄棒にも鎧にも様々な模様が散りばめられている。

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王室会館アマリン・ウィニチャイ堂

祝いの幕が張られて見辛いが、王宮内に入るとすぐ目につく建物は、左の王室会館アマリン・ウィニチャイ堂である。アマリン・ウィニチャイ堂では、国王の誕生日を祝う式典など重要な儀式が行われる。その奥に連なる即位式場パイサン・タクシン堂には、タイの守護神プラ・サヤームテワーティラート像が祀られている。右のホー・プラ・タート・モンティエンの後ろには、チャクリー・マハー・プラーサート宮殿の尖塔が見える。

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パイサン・タクシン堂

今度は左にパイサン・タクシン堂が見え、その右にホー・プラ・タート・モンティエンの建物が寄り添っている。

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チャクリー・マハー・プラーサート宮殿

アマリン・ウィニチャイ堂に連なる建物群の右手に、王宮の中央にそびえ立つ白亜の大宮殿、チャクリー・マハー・プラーサート宮殿がある。略称チャクリー宮殿は、1876年ラーマ5世により着工され、1882年完成した。3階建てで素材に大理石を用いたビクトリア様式を採用し、重層の屋根から突き出る尖塔などはタイの伝統的スタイルが踏襲されている。ラーマ5世は153人の妻や子供のため、王宮が手狭になったのでウィマーンメーク宮殿を建設し1900年にそこへ移り住んだ。宮殿中央の玉座のある謁見の間は公式行事の場であるが、そのほか王族の納骨堂となっている。

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チャクリー・マハー・プラーサート宮殿

正面入口階段の脇には、左右2頭の象の銅像により守られている。宮殿内部は非公開だが、一階の武具・鉄砲博物館のみ見学できる。

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衛兵の交代

正面階段右脇には衛兵詰所があり、定時になると衛兵の交代が行われる。

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ドゥシット・マハー・プラーサート宮殿

チャクリー・マハー・プラーサート宮殿の右手には、ドゥシット・マハー・プラーサート宮殿が建っている。略称ドゥシット宮殿は、ラーマ1世によりこの王宮内で最初に建てられた宮殿だが、1789年に火災で焼失したため、再建されている。正十字型の寺院風本体の上に7層構造の屋根を載せている。チャクリー宮殿前からは、ドゥシット宮殿の東側面が見えている。

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アポーン・ピモーク館

ドゥシット宮殿の東北にアポーン・ピモーク館が隣接している。国王専用の神輿乗り場として利用されていた。

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ドゥシット宮殿の正面

ここがドゥシット宮殿の正面。宮殿内にはガルーダの紋章の付いた玉座があり、王の座を表す布製の9段円錐傘がかけられている。王族の遺体安置所として使われ、葬儀などの行事も行われる。

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ヤモリ

王宮の後、プラ・スメーン砦の近くを歩いていたら、道端の樹木にヤモリが張り付いていた。タイにいるヤモリでは、全身薄緑色で縞模様と赤の斑点があり大きくなる「トッケイ」が有名だが、それほど多く見かけるわけではないという。タイではどこの家にもいるという薄茶色の「ヤモリ」は、「チンチョ」と呼ばれて親しまれているが、同じものかどうかわからない。

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ヤモリ

チンチョはどちらかというと皮膚がすべすべしているが、このヤモリは背面がややゴツゴツし、日本の屋久島周辺に生息するヤクヤモリ(Gekko yakuensis)にとてもよく似ている。