半坪ビオトープの日記

梓川右岸


明神池を後にして、梓川の右岸に設けられた遊歩道を、河童橋に向かって戻り始める。この大きな花は、キオン属のハンゴンソウ(Senecio cannabifolius)である。本州の中部地方以北及び北海道の山地の湿った草地、林縁に生える多年草で、高さは1~2mになる。葉は羽状に3〜7深裂し、先は尖り縁に鋸歯がある。花期は7〜9月で、径2cmほどの黄色い頭花を散房状につける。舌状花は5〜7個である。花はキオンに似るが、葉の切れ込みで区別する。
アイヌの人びとは、葉や茎を食用や薬用にしたという。反魂草という和名の由来としては、薬効から「魂を甦らせる草」としたという説がある。

こちらの黄色の花は、ツリフネソウ属のキツリフネ(Impatiens noli-tangere)である。北海道〜九州の低山から山地の湿った場所に群生する1年草で、高さは40~80cmになる。ホウセンカの仲間である。種小名のnoli-tangereとは「触るな」の意で、触ると果実が弾けることに由来する。

こちらのフキに似た葉をもつ花は、メタカラコウ(Ligularia stenocephala)である。本州、四国、九州の深山の沢沿いなどに生える多年草で、高さは60~100cmになる。茎の上部に黄色の頭花を総状につける。オタカラコウに似るが、オタカラコウの頭花の舌状花が8個前後あるのに対し、メタカラコウでは1〜3個と少ない。

アジサイに似た白い花を咲かせているのは、アジサイ属のノリウツギHydrangea paniculata)である。北海道〜九州の山地の林縁などに生える落葉低木で、高さは2〜5mになる。枝先に白色の小さな両性花が円錐状に多数つき、その中に花弁4枚の装飾花が混ざる。樹液を和紙を漉く際の糊に利用したため、この名がついた。花期は7〜9月。山野でよく目立つ花で、ハナカミキリなど訪花性の昆虫が多く集まる。

梓川の河原の向こうには、左岸に聳える六百山(2450m)が時折姿を見せる。

今度は右の深い森の中から、きれいな小川が現れてきた。勢いよく清流が迸る様はとても清々しく、手を伸ばして触ってみると予想通りかなり冷たい。

そのうち渓流が一気に広がって、人跡未踏の原生林が洪水に見舞われているような様相を見せる。

視界が開けると、草の多い湿原の彼方に、またもや六百山が峻厳な姿を見せる。登山道が整備されていないこの山を登る人もいるそうだが、かなりきつそうだ。

足下の木道の間に、黄色いオトギリソウ属のトモエソウ(Hypericum ascyron)が咲いていた。北海道〜九州の山地や河川敷の日当りのよい草地に生える多年草で、高さは50~130cmになる。径5cm、花弁5個の花は、巴形にねじれていて、和名の由来となっている。

木道の左手の岳沢口湿原を進むと、その先に渓流が広がっている幻想的な光景が現れる。まさに手つかずの自然そのものであり、しばし静かに食い入るように眺める。