半坪ビオトープの日記


中岳鞍部への巻き道はほぼ水平なので楽できると思うが、この日初めての南西斜面なので今までと違う花が見られるかもしれないという期待の方が大きい。

と思う間もなく道端に、アブラナ科ハタザオ属のミヤマハタザオ(深山旗竿、Arabis lyrata ssp.kamtschatica)が目立たぬ小さな白い花を咲かせていた。北海道、中部以北、大峰山、大山、四国の剣山の山地帯〜高山帯の砂礫地や岩場に生える多年草で、高さは30cmほどになる。日本のほか東北アジアや北米北西部にも分布する。

左手の斜面にはタカネシオガマやタカネツメクサに混じって、コマクサがあちこちに咲いていた。葉はすべて根生し、3出状に細かく裂け、粉白を帯びる。淡紅色の花は2〜7個つく。花弁は4個で外側と内側に2個ずつつき、外側の花弁は下部が大きく膨らみ先が反り返る。反り返ったところが白く見えて独特の姿となり、高山植物の女王と呼ばれる可憐な情緒を醸し出す。

岩陰に八丁坂でも見かけたイワヒゲ(Cassiope lycopodioides)の群落を見つけた。属名は、ギリシア神話に登場するアンドロメダ(Andromeda)の母カシオペ(Kassiope)の名にちなむ。
これは八丁坂で見たものに比べて花つきがあまりよくないが、花つきがよいものや枝の太い、細い、花の大きい、小さいなど形態変化が大きいといわれている。

ミヤマキンバイの上に見える小さくて白い花は、イワウメ科イワウメ属のイワウメ(Diapensia lapponica ssp. obovata)である。北海道と中部以北の高山帯の岩壁や礫地に生える常緑小低木で、枝は地を這い、厚い革質の葉を密生するので枝は見えない。花冠は15mmほどの短い鐘型で5中裂して平開し、形は梅の花に似るが基部は筒となる。5個の雄しべが黄色く目立つ。

この斜面には高原でよく見かけるクジャクチョウが元気よく飛び回っていて、ハクサンイチゲの花などに止まる姿が見られた。

中岳鞍部に近づいたところで、またもやヒメウスユキソウをいくつか見つけることができた。駒ヶ岳特産で個体数が少ないことから、環境省と長野県が絶滅危惧種に指定しているので、写真は撮っても絶対に採ってはいけない。中岳鞍部から宝剣荘までの巻き道は、危険と書かれていた通り、大きな岩の間をよじ上るなど歩きづらく、少しも楽にはならなかった。