半坪ビオトープの日記

フジ(藤)

フジもヤマフジも本州、四国、九州の山地に自生する日本固有の花である。古来より上下を問わず愛好され、牛島のフジなど各地に老樹、名木が少なくない。フジの花は紫で清麗高貴なその色香と、全盛を誇った藤原氏とのゆかりから、平安時代以来、家紋や蒔絵、陶磁器等工芸デザインにも多用されている。「枕草子」には「藤の花は、しなひながく、色こく咲きたる、いとめでたし」と記されている。「万葉集」にも二十数首詠まれ、花房が波のように揺れ動くさまを藤波とし、悩ましい恋心を言い表すことが多い。
斯くしてそ人の死ぬといふ藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに(巻12−3075)
(こうして、人は死ぬこともあるとか。藤の花の波のように思いを離れない、ただ一目見た人のために・・・ 今野寿美訳)
春もをし花をしるべに宿からんゆかりの色の藤の下かげ  
藤原定家(拾遺愚草)
くたびれて宿借るころや藤の花  芭蕉
吹き出して藤ふらふらと春の外  千代女
フジは吹き散るの意味で、花の咲く様子を表現したといわれる。フジは漢字では藤と書くが、これは中国産の紫藤の略称であって、日本のフジではなく誤用とされる。それよりも、フジはつるが右巻きで花房が長く、ヤマフジはつるが左巻きで花房が短い。万葉人が美しさを賞めたたえたフジは、はたしてフジであったか、ヤマフジであったか。おそらく区別しなかっただろう。長さではフジ、花の大きさではヤマフジに分があり、白花もヤマフジ系だ。古来よりかけ合わせられてきたと考えるべきだろう。
さて、水槽のオタマジャクシは少しずつ大きくなっていく。先日のホウレン草はすでに食べられ、死んで動かなくなったオタマも食べられてしまった。共食いしないよう、追加のホウレン草を多めに与えておいた。