半坪ビオトープの日記

ユキワリイチゲ

自然教育園の奥のほうにユキワリイチゲという名の花が群生していた。見かけたことがない花だなと思っていたが、本州西部から四国、九州だけに分布するそうだ。とくに葉の様子が変わっている。表面に白い斑紋があり、裏面は紫色を帯びる。山麓の林のふちや竹林などに生える多年草。花は淡紫色で、花期は3月から4月。花びら状の萼片が12から22個ある。陽の光が当たらないと開かないそうで、あいにくの曇り空で下を向いていたのが残念だった。
イチゲの仲間はイチリンソウ属(Anemone)といい、両半球に150種、日本には10数種自生している。ハクサンイチゲのように亜高山帯以上で見られるイチゲ類には茎葉が輪生し、細裂するものが多い。
園芸品種としてよく知られる赤い花のアネモネは「アネモネ・コロナリア」といい、アルメニアの国花にもなっている。属名のアネモネは、ギリシャ語のanemos(風)からきたもので、風の強いところに多いことによる。イギリスでは普通「ウインドフラワー(風の花)」と呼ぶ。コロナリア(coronaria)は「花冠」という意味。死者の顔にのせる花輪や酒宴のときにつける花冠に用いられたから。
ギリシャ神話にはアネモネの物語がいくつかある。「花の女神フローラの愛する西風の神ゼフィルスは、フローラの侍女アネモネを愛してしまう。フローラは腹を立ててアネモネを追放したが、ゼフィルスがなおもアネモネを追うので、嫉妬に狂ったフローラはアネモネを一輪の花に変えてしまった。」
またフクジュソウと同じく、美の女神アフロディテが美少年アドニスの死を悲しみ、流した涙からアネモネが咲いたとも。
イギリスではゼフィルスの伝説から、アネモネを「ゼフィールの花」とも呼ぶ。ドイツでは「小さな風のバラ」という。
ちなみにチョウの世界では、かつてミドリシジミの仲間をゼフィリスと総称していた。クヌギやコナラの林の上を宝石のようなミドリシジミの仲間が風に吹かれてひらひら飛ぶ姿をよく眺めたものだ。