漆は縄文時代から使われていて、世界最古の漆器は7,000年前の中国の朱塗りの椀とされ、その後、漆と漆の木ともども日本に伝わったと考えられていた。しかし、北海道函館市垣ノ島遺跡から発見された副葬品の肩当て部分の軸糸自体を漆で染めたと思われる漆製品が、放射性炭素C14年代測定法により約9,000年前の遺物と測定され、世界最古の漆製品とされた。垣ノ島遺跡は、太平洋に面した紀元前7,000年〜前1,000年頃にわたる定住を示す集落遺跡である。しかし、この漆加工品など6万点余りの出土品は、2002年に焼失してしまった。現在、世界最古の漆加工物は、列島最古の漆材である福井県鳥浜貝塚出土の縄文時代草創期の木の枝で、約12,600年前と測定されている(2011)。
写真の一番左下隅には漆塗り木製鉢が、その上には漆塗り腕輪、漆塗り浅鉢が、中央の列には赤色顔料の付着した土器や水銀朱を入れた土器が、さらに右の列には漆塗り耳栓や耳飾りなどの装飾品が展示されている。
ここで年代測定について、一言。放射性炭素C14年代測定法とは、炭素の放射性同位体の一つであるC14の性質を利用して有機物を含む物体の年代測定を行う手法である。1940年代後半にシカゴ大学のウィラード・リビーにより開発され、リビーはその功績で1960年のノーベル化学賞を受賞した。年代を測定する仕組みは門外漢には理解不能なので残念ながら省略する。誤差と信頼性については開発当初から議論が続き、修正を加えられてきた。日本の考古学にも応用され、測定により日本の縄文土器が世界最古とされ注目を浴びた。しかし、実際の年代より古く推定されるのではとの疑念もあり、依然として議論が続いている。土器の型式と制作時期、さらに被葬者との関係と同様に、素人の門外漢としては、学説の一つとして参考程度に捉えておきたい。
土偶とは、縄文時代頃に日本列島で作られていた人体(一部も含む)を模った土人形で、狭義では動物や道具を模ったものは土製品という。全国の出土総数は約15,000体で、出土分布は東日本に偏っている。土偶の大半は破損していて、特に脚部の一方のみを故意に破壊した例が多く、災厄を祓うためと考えられている。女性の人体は大きくデフォルメされていて安産・多産を祈るとする説もある。
ここに陳列されている土偶は、縄文時代晩期(前1,000〜前400年)の橿原市橿原遺跡から出土したもので足の土偶が多く、体部や中空土偶もある。
こちらは縄文時代後期〜晩期の遺跡から出土した多様な石棒。石棒(せきぼう)とは、縄文時代の磨製石器で、男根を模したと考えられる呪術・祭祀に関連した特殊な道具と見られる。最古の石棒は、千葉県大網白里市升形遺跡出土の旧石器時代後期(約24,000年前)のもので、最大の石棒は、長野県佐久穂町にある北沢大石棒で、長さは223cm、直径は25cmである。