半坪ビオトープの日記


中之坊の庭園「香藕園(こうぐうえん)」は、古くから大和三名園(竹林院、慈光院と)と賞される池泉回遊式兼鑑賞式庭園で、史跡、名勝の指定を受けている。鎌倉時代に起源を持ち、桃山時代に完成し、江戸初期に改修された。心字池に亀島などの出島が配されている。

天平の三重塔(東塔)が借景として映え、心字池にその影を落とす。

江戸初期に後西天皇を迎えた中之坊書院は、こけら葺きの情緒豊かな建築で、隣り合わせの茶室とともに重文に指定されている。

客殿の前にも牡丹が咲いている。客殿の絵天井は、昭和初期から平成に亘る多くの画家が奉納した名画で飾られている。この絵天井の間では中将姫の表した仏の姿を描き写す「写仏」を体験できる。 

庭の片隅に歌人、釈迦空の歌碑がある。「ねりくやう すぎてしずまる 寺のには はたとせまへを かくしつゝゐし」釈迦空
釈迦空こと折口信夫は、中学校を卒業する明治38年頃に中之坊に滞在していたそうで、二十年後にそのときを回想してこの歌を詠んだという。
中将姫伝説をもとに折口信夫が「死者の書」を書いたのは、その後十年ほど後のことになるが、構想はかなり前からあったはずである。

最後に霊宝館にて収蔵されている宝物を見る。古い経巻や仏画のほか、日本最古という中将姫剃髪剃刀や毛髪による刺繍、画像など中将姫関連のものも多く展示されている。霊宝館前の黄色の牡丹を最後に、先のGWに見て回った、吉野から長谷、室生など飛鳥の廻りを訪ねる旅を終えた。