猿岩展望台に歌碑
猿岩展望台駐車場の一角に歌碑があった。「天町のたわむれおかしとあかずみる 壱岐 猿岩の夏姿かな」残念ながら詠み手はわからない。
黒崎砲台跡への入口
駐車場のすぐ手前に黒崎砲台跡への入口がある。第一次世界大戦 後の大正11年 (1922)、ワシントン軍縮 会議で、米、英、日の主力艦の所有率を「5:5:3」とすることになった。日本の軍部は、廃棄する軍艦の主砲を利用して秘密要塞を対馬 と壱岐 に造った。
黒崎砲台跡への入口
対馬海峡 を通過する艦船を攻撃するため、黒崎半島には昭和8年(1933)戦艦土佐の40cmの主砲が設置され、砲身の長さ18.83m、1tの弾丸の射程距離35km、地下7階建ての東洋一の砲台といわれた。第二次世界大戦 では、航空機が主流になったため、黒崎砲台は一発も実弾を発射することなく終戦 を迎え、「打たずの砲台」と陰口を言われたという。
太郎磯・次郎礫
猿岩の近く、湿り気のある草原を下っていくと、高さ数十mの断崖絶壁の上の玄武岩 の石畳に、太郎磯(つぶて)・次郎礫という、直径1mを超える二つの巨石が転がっている。
太郎磯・次郎礫
昔、壱岐 の鬼たちが、退治に来た百合若大臣と戦った際、巨石を投げて応戦したといわれ、その時太郎・次郎が投げずに忘れた石とか、百合若大臣が扇ではね返した石とかの伝説がある。
ハマナタマメ
太郎磯・次郎礫に下る湿り気のある草原にピンク色の花を見つけた。ナタマメ属のハマナタマメ(Canavalia lineata )という多年草 。本州以南の海岸に生える蔓性草本 で、基部は木質化する。蔓は長く伸び、 茎には短い圧毛をまばらにつける。葉は三出複葉で、円形から広倒卵形、長さ5〜12c m、幅4〜10c m、やや革質、先端は尖るか丸まる。夏に葉腋から総状花序を出し、淡桃色の蝶型花を10 個ほどつける。
セイヨウミヤコグサ
こちらの黄色の花は、形がミヤコグサ (Lotus japonicus )の花によく似るが、よく見ると翼弁はそっくりだが、旗弁が横に広がっているように見える。セイヨウミヤコグサ (Lotus corniculatus var.corniculatus )というヨーロッパ原産種の帰化植物 かもしれないが、簡単に見分けることができない。
チョウセンシオンとミゾソバ
ヨメナ によく似たこの花は、チョウセンシオン別名チョウセンヨメナ (Aster koraiensis)と思われる。野菊の種類は見分けがつきにくく、花の形や色がヨメナ に似るが、葉の形が披針形で先が尖ることから判断した。原産地は朝鮮半島 で日本へは大正時代に渡来し栽培されているが、ここでは直接海を渡ってきたものと思われる。
右下のピンク色の小花は、ミゾソバ (Polygonum thunbergii)という一年草 。日本全土の三谷の水辺に普通に群生する。高さは30〜80cmになる。茎には下向きの棘がある。葉は互生し、形が牛の額に見えることから、別名ウシノヒタイとも呼ばれる。夏から秋にかけて、茎の先に根元が白く先端が薄紅色の小さな花を多数咲かせる。花弁に見えるものは萼である。
センニンソウ
こちらの白い花は、キンポウゲ科 のセンニンソウ (Clematis terniflora )という蔓性半低木。属名のクレマチス は「若枝」を意味する。和名は痩果に付く綿毛を仙人の髭に見立てたことに由来する。別名が「ウマクワズ(馬食わず)」というように、有毒植物である。
ソナレムグラ
こちらの花は、辰ノ島でも見かけたソナレムグラ(Leptopetalum coreanum var. coreanum )という多年草 。茎は基部から枝を多く分け、高さ20c mほどになるが、風当たりの強い岩上では3c mほどにとどまる。肉厚の葉にはツヤがあり、密に生え、上部の葉の脇に4mmほどの白花を一個ずつつけ、数個が群がる。
ノシラン
こちらの藪陰に咲くのは、ジャノヒゲ属のノシラン (Ophiopogon jaburan )という常緑多年草 。東海地方以西の海岸の林下に自生する。細長い葉には光沢があり、漢字では熨斗蘭と書くが、ラン科ではなくユリ科 である。種小名のヤブラン は、ヤブラン のようなという意味で、姿はヤブラン に似るが、属は異なる。
湯本湾の島々
黒崎半島の観光を終え、湯本湾に沿って湯本浦に戻る途中、湯本湾の最も南に片苗湾があり、そこから湯本湾を見返ると、たくさん小島が見えた。左前方が黒崎半島で、猿岩の北に阿瀬島、蛇島、牛島、手長島まで連なる島々と、右手前には湯本湾の中央に位置する黒ヶ島が認められる。