半坪ビオトープの日記

猿岩、太郎磯・次郎礫

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猿岩
翌朝も快晴。湯本湾を囲む黒崎半島の先端に、壱岐のシンボルともいうべき「猿岩」がある。壱岐島が誕生する謂れとして、「壱岐は生きた島なので流されないようにと八本の柱を立てて繋いだが、その柱は折れのこり、今も岩となって残っている」という言い伝えがある。その壱岐の八本柱の一つがこの猿岩だという。2015年に「日本の奇岩百景」に認定された。

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猿岩
高さ45mの玄武岩でできた海食崖の一部である猿岩は、「そっぽを向いた猿」そっくりの横顔がユニークな奇岩である。壱岐島の基盤は、新第三紀中新世の「勝本層」で、「壱岐の土台石」と呼ばれる砂岩・頁岩の互層で、場所により凝灰岩が挟まれている。新第三紀鮮新世になると火山活動が活発化し、「壱岐層」と呼ばれる流紋岩質凝灰岩、安山岩類溶岩と流紋岩質溶岩が形成された。壱岐層の上には、この猿岩を構成している第四紀更新世に噴出した玄武岩溶岩類がある。黒っぽい流動性の高い溶岩である。

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猿岩展望台に歌碑

猿岩展望台駐車場の一角に歌碑があった。「天町のたわむれおかしとあかずみる 壱岐猿岩の夏姿かな」残念ながら詠み手はわからない。

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黒崎砲台跡への入口

駐車場のすぐ手前に黒崎砲台跡への入口がある。第一次世界大戦後の大正11年(1922)、ワシントン軍縮会議で、米、英、日の主力艦の所有率を「5:5:3」とすることになった。日本の軍部は、廃棄する軍艦の主砲を利用して秘密要塞を対馬壱岐に造った。

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黒崎砲台跡への入口

対馬海峡を通過する艦船を攻撃するため、黒崎半島には昭和8年(1933)戦艦土佐の40cmの主砲が設置され、砲身の長さ18.83m、1tの弾丸の射程距離35km、地下7階建ての東洋一の砲台といわれた。第二次世界大戦では、航空機が主流になったため、黒崎砲台は一発も実弾を発射することなく終戦を迎え、「打たずの砲台」と陰口を言われたという。

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太郎磯・次郎礫

猿岩の近く、湿り気のある草原を下っていくと、高さ数十mの断崖絶壁の上の玄武岩の石畳に、太郎磯(つぶて)・次郎礫という、直径1mを超える二つの巨石が転がっている。

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太郎磯・次郎礫

昔、壱岐の鬼たちが、退治に来た百合若大臣と戦った際、巨石を投げて応戦したといわれ、その時太郎・次郎が投げずに忘れた石とか、百合若大臣が扇ではね返した石とかの伝説がある。

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ハマナタマメ
太郎磯・次郎礫に下る湿り気のある草原にピンク色の花を見つけた。ナタマメ属のハマナタマメ(Canavalia lineata)という多年草。本州以南の海岸に生える蔓性草本で、基部は木質化する。蔓は長く伸び、茎には短い圧毛をまばらにつける。葉は三出複葉で、円形から広倒卵形、長さ5〜12cm、幅4〜10cm、やや革質、先端は尖るか丸まる。夏に葉腋から総状花序を出し、淡桃色の蝶型花を10個ほどつける。

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セイヨウミヤコグサ
こちらの黄色の花は、形がミヤコグサLotus japonicus)の花によく似るが、よく見ると翼弁はそっくりだが、旗弁が横に広がっているように見える。セイヨウミヤコグサLotus corniculatus var.corniculatus)というヨーロッパ原産種の帰化植物かもしれないが、簡単に見分けることができない。

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チョウセンシオンとミゾソバ

ヨメナによく似たこの花は、チョウセンシオン別名チョウセンヨメナ(Aster koraiensis)と思われる。野菊の種類は見分けがつきにくく、花の形や色がヨメナに似るが、葉の形が披針形で先が尖ることから判断した。原産地は朝鮮半島で日本へは大正時代に渡来し栽培されているが、ここでは直接海を渡ってきたものと思われる。

右下のピンク色の小花は、ミゾソバ(Polygonum thunbergii)という一年草。日本全土の三谷の水辺に普通に群生する。高さは30〜80cmになる。茎には下向きの棘がある。葉は互生し、形が牛の額に見えることから、別名ウシノヒタイとも呼ばれる。夏から秋にかけて、茎の先に根元が白く先端が薄紅色の小さな花を多数咲かせる。花弁に見えるものは萼である。

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センニンソウ
こちらの白い花は、キンポウゲ科センニンソウClematis terniflora)という蔓性半低木。属名のクレマチスは「若枝」を意味する。和名は痩果に付く綿毛を仙人の髭に見立てたことに由来する。別名が「ウマクワズ(馬食わず)」というように、有毒植物である。

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ソナレムグラ
こちらの花は、辰ノ島でも見かけたソナレムグラ(Leptopetalum coreanum var. coreanum)という多年草。茎は基部から枝を多く分け、高さ20cmほどになるが、風当たりの強い岩上では3cmほどにとどまる。肉厚の葉にはツヤがあり、密に生え、上部の葉の脇に4mmほどの白花を一個ずつつけ、数個が群がる。

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ノシラン
こちらの藪陰に咲くのは、ジャノヒゲ属のノシランOphiopogon jaburan)という常緑多年草。東海地方以西の海岸の林下に自生する。細長い葉には光沢があり、漢字では熨斗蘭と書くが、ラン科ではなくユリ科である。種小名のヤブランは、ヤブランのようなという意味で、姿はヤブランに似るが、属は異なる。

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湯本湾の島々

黒崎半島の観光を終え、湯本湾に沿って湯本浦に戻る途中、湯本湾の最も南に片苗湾があり、そこから湯本湾を見返ると、たくさん小島が見えた。左前方が黒崎半島で、猿岩の北に阿瀬島、蛇島、牛島、手長島まで連なる島々と、右手前には湯本湾の中央に位置する黒ヶ島が認められる。