半坪ビオトープの日記

木坂の藻小屋、ヤクマの塔

 

 

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藻小屋

木坂御前浜園地の海側にがっしりした石組の構造物が建っている。浜石を積み上げ屋根を葺いたもので藻小屋という。船の格納にも利用されていたため「船屋」ともいう。

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藻小屋

対馬は全島の89%は山林に覆われ、耕地は3%、宅地は1%で、古代から現代まで食料自給ができない島としての宿命を負っている。そのため昔から痩せた土地の肥料として海藻が使われてきた。西海岸の村々では晩春の頃、船を操って「藻きり」をしたり、海岸に漂着した寄り藻を乾して畑の肥料にするため貯蔵したりしていた。

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藻小屋

昔は西海岸に多く存在したが、現存するのは木坂に復元されたこの8棟のみとなり、当時の生業の風景を伝える貴重な資産として、「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選定されている。

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藻小屋と鹿牧場

屋根は復元されているが、側面の石積みは当時のままである。向こうに見える鳶崎の斜面には、野生の鹿・ツシマシカが放牧されている鹿牧場があり、取り囲む金網と支柱が認められる。ちなみにツシマシカは対馬にのみ生息するニホンジカの一種で、2015年前後には4万頭に増殖して農作物被害が多く問題化している。

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ヤクマの塔

対馬海峡に面する御前浜には、ヤクマの塔と呼ばれる円錐状の石積みがある。ヤクマとは、対馬に残る天道信仰の典型例とされる祭りで、旧暦6月初午の日に天道社に参拝し、ヤクマの塔を一基作り、伊豆山の方向を拝み、男児の健やかな成長や五穀豊穣を祈願する。

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ヤクマの塔

ヤクマの祭りは、鳶崎の向こう側の集落・青海と木坂にのみ残る対馬独自の習俗・信仰である。天道信仰とは、対馬独自の天神・日神の信仰で、自然的な天の神信仰がやがて「天道法師」という伝説的人物として具現化されたもの。八幡神を祀っていたのは、母子神信仰が基盤にあるからで、太陽によって孕んだ子供を天神として祀る天道信仰の上に、母神(神功皇后)と子神(応神天皇)を祀る八幡信仰が集合していた。母子神信仰は、日本神話と結び付けられて、豊玉姫命と鸕鷀草葺不合尊とも解釈された。しかし、母子神信仰の起草には海神や山神の祭祀があり、太陽を祀る天道信仰が融合していたと考えられる。つまり、元々は自然崇拝に発した祭祀が、歴史上の人物に仮託され、社人による神話の再解釈が導入され、さらに明治時代以降は国家神道の展開によって、祭神が日本神話の神々に読み替えられ、式内社に比定する動きが強まった。

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木坂御前浜園地

木坂御前浜園地はキャンプのできる広い芝生広場で、休憩所兼案内所の右手に見える海神神社の社叢は木坂野鳥の森にもなっている。木坂の集落の北側にあって海神神社の鎮座する山を伊豆山と呼ぶが、伊豆はイツク(厳く)の意味で、神が依り憑く神聖な山の意である。神社の南にある木坂の集落は、旧社人が居住していたので穢れを忌む意識が強く、家屋は川の北側にあって、女性は出産に際しては川の南側に移って小屋の中で出産し、産後しばらく忌が開けるまで滞在した。墓は参り墓が川の南岸にあり、埋め墓は南方の山を越えた海岸部にあるという両墓性の形態をとっていた。産穢と死穢を忌む意識が強い。

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ツシマヤマネコ

休憩所兼案内所には、対馬の弥生遺跡分布図や、対馬の動植物の説明などがあり、ツシマヤマネコの写真もあった。

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対馬の弥生遺跡

峰町の歴史民俗資料館や豊玉町郷土館を拝観すると、対馬には弥生遺跡だけでなく多くの考古遺跡・出土遺物があるとわかるが、展示品の撮影が禁止なのが残念である。この案内所にあった対馬の弥生遺跡分布図を見ると、浅芽湾北部の豊玉町の二位浅芽湾や、峰町の三根湾に弥生後期(2〜3世紀)の注目すべき遺跡が集中していることがよくわかる。その頃、「魏志倭人伝」にいう「対馬国」の中心がこの地域にあったものと考えられる。

 

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アナゴ寿司

 昼食は初日にも寄った雞知の「肴やえん」にて、アナゴ寿司を食した。

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レンコダイの唐揚げ

こちらはレンコダイの唐揚げ。連子鯛(レンコダイ)は、長崎県が水揚げ高全国一位の魚である。

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アラカブの味噌汁

こちらのアラカブの味噌汁も美味しい。長崎県ではカサゴのことをアラカブと呼ぶ。