半坪ビオトープの日記

先山千光寺


淡路島中部にある千山山地の最高峰、先山(せんざん、448m)の山頂には、淡路島第一の名刹である先山千光寺が建っている。先山は麓から眺める姿が富士に似ていて、淡路富士の別名も持つ。山頂近くまで急傾斜の細道があるが、広い行き止まりに駐車して茶屋の先の参道を登り始めると、急な石段がいくつか続く。最初にたどり着いたのは、別格本山千光寺の寺号標。

次にたどり着いたのは、本堂ではなく大師堂。傍らに弘法大師像が見守っている。

大師堂から左に進み、さらに石段を登ると舞台と呼ばれる展望所が南に面していて、目の前には洲本市の緑豊かな風景が広がる。さらに最後の石段を登っていくと、ようやく仁王門が見えてくる。

豪壮な仁王門には「先山千光寺」の扁額が掲げられている。仁王像は運慶の作と伝わるが、実際の作者は不明である。

仁王門をくぐると、新緑とつつじの花に囲まれた境内最高所に、三重宝塔が建ち、その先に本堂が建っている。

寺の縁起によると先山千光寺は、延喜元年(901)「狩人忠太」が開創したという。播州上野の深山で、ある日、狩人の忠太(藤原豊広)は為篠王(いざさおう)という大猪を射た。猪は背に矢を負ったまま海を渡って先山に逃げた。猪を追ってこの山に入った忠太は、大杉の洞の中に赤々と光を放つ千手千眼観世音菩薩を見た。その菩薩の胸には忠太の射た矢が刺さっていた。忠太はむやみに獣を殺傷した罪を深く反省し、名を寂忍と改めて仏道に入り、この山に七堂伽藍を建立し、千手千眼観世音菩薩を安置したという。この話の通り、狛犬の代わりに珍しく猪が神使として本堂を守っている。この猪像は天保2年(1831)の奉献である。

高野山真言宗の別格本山である先山千光寺は、淡路島西国三十三箇所霊場の第一番の札所であり、淡路島十三仏の第一番霊場でもある。本堂の真ん中には本尊の千手千眼観世音菩薩が安置されている。鰐口は天文15年(1546)のものという。

千手千眼観世音菩薩の手前には「千手観音」と大書された大きな提灯が掲げられている。

堂内をよく見ても観世音菩薩は普段は隠されているようだ。

観世音菩薩の右手には不動明王が祀られている。

観世音菩薩の左手には毘沙門天が祀られている。

ここには二柱大御神が祀られている。そもそも先山の名は、国生み神話でイザナギイザナミの二神が淡路島を創った時に、最初にできた山がこの先山であるとされることによる。

すなわちここの二柱大御神とはイザナギイザナミであるが、千光寺のすぐ下方、標高400mほどの所に高さ8mの岩があり、岩戸神社が建てられていて、日本神話で天の岩戸に姿を隠した天照大御神を祀っている。

本堂の左手に鐘楼堂が建っている。この中にある梵鐘は、弘安6年(1283)の銘があり、国の重文に指定されている。

三重塔は、高田屋嘉兵衛により文化10年(1813)に修築されたという。初層は本瓦葺、二・三層は銅板葺。高さ約26m。塔は擬宝珠高欄を廻らせ、中央間桟唐戸、脇間連子窓、中備えは中央間蟇股、脇間蓑束。とりわけ初層、尾垂木上に邪鬼を置いているのが粋である。