半坪ビオトープの日記

備瀬のフクギ並木


沖縄海洋博公園のすぐ北側に位置する備瀬地区は、碁盤の目のように区画された村落で、約250戸ある住宅のほとんどは、繁茂したフクギの屋敷林に囲まれている。

ナカミチと呼ばれるメインストリートの両脇には、無数に小道が張り巡らされ、沖縄の伝統的景観を残している。

そんな備瀬のフクギ並木に隠れるようにして建つ、アジアンモダンなレストラン・カフェ「CAHAYA BULAN」にて昼食をとる。この辺りは食事処が少ないのでもちろん予約しておいたが、店の入口がわかりにくかった。ここを海岸に向かって下る。

店内の大窓からも海景色が見られるが、テラス席からは伊江島の「タッチュー」(城山・ぐすくやま)が目の前(西)に浮かんでいて手に取るようだ。

目を南に転ずると、海洋博公園の外れにあるエメラルドビーチにて海水浴や日焼けを楽しむ人々の姿が遠望できた。我々高齢者は、今夏の沖縄旅行では誰も泳ぐことがなかったが、次に来るときは時間の余裕を持って、海辺でゆっくりしたいものだ。

北の方の海岸線の先には備瀬崎が臨まれる。くびれの左側の離れ小島は「ミーウガン」と呼ばれる聖域である。

チャハヤ・ブランの食事メニューは、ラフティー丼、アジアンそば、中華風鶏がゆ、野菜ビビンバの4種で、沖縄・ベトナム・中華・韓国料理の代表が揃っている。こちらが泡盛八角でじっくり煮込んだ沖縄料理の豚角煮、いわゆるラフティーの丼で、ゴーヤの漬物などの薬味も付いている。ドリンクも「ゆたかみどり」や「べにふうき」という沖縄緑茶や、ゴーヤー茶、グァバ茶月桃茶、南アフリカ原産の「ルイボスフルーツティー」、さんぴん茶ジャスミン茶)など種類が豊富である。

こちらが鶏ガラと豚ダシで煮込んだ中華風鶏がゆで、ゴーヤ、ザーサイ、特製ゆで卵が添えられている。

腹ごしらえが済んだら備瀬のフクギ並木通りなる村落中心部に入る。道がますます細くなり、フクギのトンネルの中に優しい木漏れ日が差し込み、迷路のような小道が続く。沖縄の村落では古くから防風林として、「福を呼ぶ木」ともいわれるフクギが用いられていた。そのフクギは、琉球王朝時代の17世紀後半に活躍した政治家の蔡温が、中国で学んだ風水の思想を応用して植えたと伝えられる。とても成長が遅いが、幹がまっすぐに伸びて枝葉が密生し、葉が厚くて燃えにくく、防火・防風に最適とされる。建築用材のほか、樹皮からは染料、枯れた葉は燃料に使えた。

沖縄戦では資材として各地のフクギの多くが伐採された。備瀬集落では樹齢約300年というフクギ約2万本が現在も立ち並んでいる。

フクギ並木も終わりに近づいた頃、道端にショウジョウソウ(Euphorbia heterophylla)が咲いていた。ブラジル原産の非耐寒性一年草で、別名サマーポインセチアと呼ばれるように、クリスマスの頃見かけるポインセチアの仲間である。バイオリンのような形の苞葉は、夏に赤色に変わるが、茎頂には花弁のない黄色い小花を咲かせる。沖縄県では野草化していて、特に八重山地方に多く見られ、雑草化している。

フクギ並木を通り抜けると、近くの海岸に出ることができる。潮の引いた磯には黄色いボートが残され、伊江島タッチューも一層間近に迫っている。伊江島の手前のサンゴ礁(リーフ)を右にたどると備瀬崎へと至る。