半坪ビオトープの日記

二風谷アイヌ文化博物館


萱野茂二風谷アイヌ資料館から国道を挟んで西側、沙流川二風谷湖を背にして、平取町立二風谷アイヌ文化博物館が建っている。萱野茂が半世紀にわたって収集した民具や自ら復元製作した民具などの資料の内1,121点が「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション」として平成14年(2002)に文化庁より重要有形民俗文化財の指定を受け、919点が当館所蔵、202点が萱野茂二風谷アイヌ資料館所蔵となっている。

この二風谷アイヌ文化博物館と向かいに建つ平取町アイヌ文化情報センターの手前には、復元された様々なチセが建ち並んでいる。

これらのチセ群を含む二風谷区域は、沙流川流域の河川景観などともに、平成19年(2007)に「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」の一部として、国の重要文化的景観に選定されている。

館内は4つの展示ゾーンに区切られ、「アイヌ−人々の暮らし」「カムイ−神々のロマン」「モシリ−大地のめぐみ」「モレウ−造形の伝承」と銘打たれている。「アイヌ」ゾーンでは、木彫・衣類・食事・住居などの古い生活用具を展示している。育児・遊戯娯楽の展示の右上の「キサラリ」という子供向けの耳高お化けは、鎌刃に黒い布を巻きつけ、くちばしのように見せ、耳は赤い布を巻いている。

喫煙用具の「タンパクオプ」は煙草入れで、作り手によって様々な文様が施されている。「ニキセリ」は木製の煙管(キセル)である。アイヌの人々は煙草を和人から購入する以外に自らも栽培し、代用品としてイタドリの葉、ブドウの葉、ヨモギの葉などを乾燥させ刻んで用いたという。

左上の手袋は「テクンペ」という手甲で、防寒のほか山菜採りにも使用した。中央上の「レクトゥンペ」(頚飾帯)は、女性用の首飾りで、首に巻いて後ろで結ぶ。帯状布に金属製の透かし入り飾り板が縫い付けられている。右下の小物入れは、「カロプ」というガマ草製の火打道具入れである。

神への捧げ物としてのイナウには、神へ伝言を伝えたり、魔払い、清めを行うほか、それ自体が神となる機能もある。下段左端の木は、「ネウサラカムイ」という熊の話し相手の神で、山で獲った熊を一晩置くとき熊のそばに立てる。その右の5本の「シロマイナウ」は、逆さ削りのイナウで、熊送りや新築祝いなどの儀式で火の神に捧げる。中段に横になった削りかけの塊があるが、「イナウル」という略式のイナウで、魔払い、病気除け、失せ物探しなどに用いる。

ガラス製の首飾り「タマサイ」は女性が身につける装身具だが、耳飾りの「ニンカリ」は男女ともに身につける装身具である。ガラス製や金属製の小さな玉が真鍮の輪に通されている。本州産と大陸産があるという。

神々への祈り−カムイノミに欠かせない祭具に「イクパスイ」(棒酒箸)がある。長さ30cm、幅2cm、厚さ3~5mmほどの薄い板の表面に様々な文様が彫られている。アイヌの言葉と献酒をカムイに届けてくれる。漁狩猟には必ず携帯し、儀礼にも用いた。

左手前の「クヨイ」は、動物の膀胱で作った水入れ袋であり、水や油を入れる為に使う。中央奥の「チェプケリ」は、鮭皮で作った靴で、大人の靴一足には鮭4本分の皮が必要だった。一冬持つのがせいぜいで、冬はやはりその右にある「ユクケリ」という鹿の脛の毛皮で作った足首までの深さがある靴を多用したという。

アイヌの衣服はモレウ(渦巻文様)やアイウシ(棘)など独自の文様が施されているのをよく見るが、「トマ」というガマ草で編んだ茣蓙もよく見かける。トマは敷物として用いられるだけでなく、壁に張り巡らすこともあり、庭に簀を広げてその上に敷き、穀物などを干すのにも使う。