半坪ビオトープの日記

神威岬、神威岩


神威(カムイ)とはアイヌ語で「神」を意味する。神威岬は、古くは御冠(オカムイ)岬とも呼ばれたという。また、積丹(シャコタン)とは、アイヌ語のシャコクタン(夏の村)に由来する。
「チャレンカの道」はまだまだ細く続いている。柵に囲まれているから安心して進むことができるが、柵がなかったらかなり危険に違いない。

大海原へダイナミックにせり出した神威岬は、冬には吹きすさぶ嵐や雪に見舞われ、人を近づけない威容の中、オオワシオジロワシも見られるという。初夏には斜面に山吹色の積丹の町花・エゾカンゾウハマナスの花が見事に咲き誇るという。

神威岬の先端に近づくにつれ、痩せ尾根の周りが今にも崩れそうになり、スリル満点の上下動が続く。あと一息で灯台にたどり着く。

最後に一登りすると目の前に灯台が見えてくる。現存する北海道の灯台では5番目の古さだが、現在は無人となっている。

神威岬の下部は、後期中新世の余別層火砕岩部層、上部は鮮新世の野塚層砂岩礫岩層である。この岩層は灯台へ行く回廊で様々な岩相を見ることができる。特に、灯台の手前には砂岩とシルト岩の見事な互層がある。

神威岬灯台は、明治21年(1888)に設置され、大正12年(1923)と昭和35年(1960)に建て替えられている。初点灯から72年間で87名の職員がここに住み込んで勤務し、市街地までは4kmも険しい道を往復した。雨水を生活水とし、米や日用品などは木船の備船で買出していたという。

灯台のすぐ先は岬の先端で、標高80mほどの神威岬展望台広場からは、岬の先に続く岩々が見渡せる。これら岩礁の表面積は約500坪もあるそうで、千畳敷とも呼ばれる。

岩々の中で最も存在感があるのが、展望台から北西に見える「神威岩」で、高さ約40m、胴回り約50mあり、神威岬のシンボル的存在である。その右奥にある少し大きめの岩が「メノコ岩」である。

展望台広場から灯台を振り返ってみると、その背後には積丹半島の余別岳や積丹岳がまだ雪を抱いて控えているのだが、雲に覆われ始めていた。

少し写真が不鮮明だが、この白い花は、エゾイワハタザオ(Arabis serrate var. glauca)と思われる。フジハタザオの変種で、北海道と東北地方の亜高山帯〜高山帯の砂礫地や岩隙に生える多年草である。

こちらの黄色い花は、似た花が多くて見分けにくいが、ミヤマキンバイ(Potentilla matumurae)と思われる。北海道と本州中部地方以北の高山帯の砂礫地や雪田周辺に咲く多年草である。

こちらの白い花は、ニリンソウ(Anemone flaccida)である。日本全国の山地に生える多年草で、花は1〜3個つく。深く裂けた根生葉を持ち、茎に3枚が輪生する葉にはサンリンソウのような柄はない。

駐車場の外れにたくさん咲いていた青紫色の花は、エゾエンゴサク(Corydalis ambigua)である。初夏には地上部が枯れて翌春まで地中の地下茎で過ごす、スプリング・エフェメラルの一種である。同属のキケマンやムラサキケマンなどと違い、毒性がなく風味が良いので食用となる。花を含む地上部は野菜のように加熱調理して食べる。塊根はアイヌ語で「トマ」と呼ばれ、保存食として利用されてきた。北海道によく咲き、地中の塊茎が漢方薬の「延胡索」に似るためエゾエンゴサクと名付けられたが、中国産の漢方薬エンゴサクの代用として生薬で販売もされている。
さて、明日から一週間ほど旅行に出かけます。この間、好みのカテゴリーを選んで、過去の記事もご覧ください。山や花が好きなら大雪山やスイス・アルプスを、神社仏閣に興味のある方は熊野や伊勢、高千穂や出雲などのある和歌山・三重・宮崎・島根県を見ると面白いと思います。