半坪ビオトープの日記

室蘭八景


白老の後、登別を後回しにしてその先の室蘭を訪れた。室蘭港を跨いで絵鞆半島に架かる白鳥大橋は、室蘭港の別名「白鳥湾」から名付けられた。白鳥大橋が展望できる記念館「みたら室蘭」の前に、白鳥大橋主塔基礎工事で海面下50mから掘り出した大石が「記念石」として展示されている。

平成10年(1998)に開通した白鳥大橋は、国内初の積雪寒冷地に建設された長大橋であり、関東以北で最大の吊り橋でもある。長さ1,380m、幅14.25m、高さ140m、総事業費1,153億円、これだけ大きな橋が通行料無料で開通するのは全国でも異例とされた。白鳥大橋と室蘭港の夜景は、「輝く光の宝石箱」といわれるほどロマンチックとされ、夜景スポットになる展望台がいくつも設定されている。

絵鞆半島の西端、絵鞆岬展望台から北西には大黒島が見える。室蘭市を代表する8つの景勝地・室蘭八景に「絵鞆岬の景観」および「黒百合咲く大黒島」が選ばれている。大黒島は、1796年、探検に訪れたイギリス船のプロビデンス号の乗組員、ハンス・オルソンが埋葬された島で、その後大黒天が祀られたことから大黒島と呼ばれるようになった。大黒島の西には噴火湾が広がっているが、プロビデンス号の船長ブロートンは、その噴火湾の名付け親でもある。

絵鞆半島の最高峰・測量山は標高199.6mの展望台であり、山頂からの360度の展望は室蘭八景に選ばれている。室蘭港の夜景も美しく、日本夜景遺産に選定されている。明治5年(1872)札幌本道を造るとき、陸地測量道路建築長の米国人ワーフィールドがこの山に登り、道路計画の見当をつけたことから「見当山」と呼ばれていたのをのちに「測量山」に改めたとされる。周辺一帯は測量山緑地として保存され、野鳥の宝庫としても知られる。

北には室蘭港が、東にはトッカリショや金屏風などの断崖絶壁が連なる起伏ある海岸地帯が遠望できる。昭和6年には歌人与謝野鉄幹・晶子夫妻が測量山を訪れている。
「我立てる 即涼山の 頂きの 草のみ青木 霧の上かな」鉄幹
灯台の 霧笛ひびきて 淋しけれ 即涼山の 木の下の路」晶子

室蘭港を囲む絵鞆半島の太平洋側には、高さ100m前後の断崖絶壁が約14km続き、地球岬に代表される風光明媚な景勝地が連なる。室蘭八景の一つでもある地球岬は、昭和60年の朝日新聞社主催の「北海道の自然100選」で第1位となり一躍全国的に知られることになった。

西の海岸線をたどると、チャラツナイ(茶良津内)とか蓬莱門という景勝地が連なるのだが、近くまで行く時間はなかった。

地球岬展望台から足元の駐車場を見下ろすと、彼方北には鷲別岳(911m)の山並みが見えた。別名室蘭岳の名でも知られ、北海道百名山に選定されている。

地球岬展望台から南の海を眺めると、遥か彼方に陸地が見える。渡島半島東端と思われる。

地球岬から東に金屏風、トッカリショと約100mの直立した断崖が連なる。約1000万年前の火山活動によって堆積した火山灰が、貫入した高熱の溶岩で黄変し赤褐色を帯びた崖面に朝日が映えると、あたかも金の屏風を立て連ねたように見えることから金屏風と呼ばれるようになり、室蘭八景の一つとなっている。展望台から見える小さな岬は、アイヌ語で「ポン・チケウェ」(子である・削れたもの)であり、地球岬の語源となる「ポロ・チケウェ」(親である・削れたもの)と対で呼ばれていた。

金屏風のすぐ先にはトッカリショがある。アイヌ語の「トカル・イショ」(アザラシ・岩)を語源とする。現在は岩ではなく、展望台下の砂浜を指す地名となっている。かつては冬季になると、室蘭近海にはアザラシが群れをなして集まったが、殊にこの海岸の岩場に数多く集まった。さらに北東のイタンキ浜まで凝灰岩質の断崖が連なっている。

緑のベルトと奇岩の景観が印象的なことから室蘭八景の一つに数えられ、また国の名勝「ピリカノカ」の一部に指定されている。ピリカノカには、室蘭八景のうちの銀屏風周辺のハルカラモイ、マスイチ浜、地球岬、トッカリショの四ヶ所が選定されている。