半坪ビオトープの日記

白老ポロトコタン


今年のGWは、北海道の道南地方を一周した。新千歳空港から一路南下し、まず初めに昔からアイヌ集落がある白老町のポロトコタンを訪れた。ポロトコタンとは、アイヌ語で「大きな湖の集落」という意味で、ポロト湖の湖畔にアイヌの伝統的家屋「チセ」が並び、伝統文化を通してアイヌ文化を体験できる。

園内に入ってすぐ右手に、コタンコロクル(村長)の大きな像が立っている。高さ16m、右手にイナウ(御幣)を持って、訪れる人の旅の安全と幸福を祈っている。アイヌの村長は、支配者ではなく、祭主や調停などにあたる精神的なリーダーであった。

園内中央右手に博物館があり、その先に茅葺の伝統的なチセが5棟並んでいる。右からサウンチセ(手前の家)、オトゥタヌチセ(次の家)、貸衣装をやっているポロチセ(大きい家)、マクンチセ(奥の家)、手工芸の実演が行われるポンチセ(小さい家)と呼ぶ。

一番手前のサウンチセでは、アイヌ古式舞踊の話と踊りが行われる

チセの中に入ると、舞台の中央左手にはアベオイ(囲炉裏)が設えられている。アイヌ民族は囲炉裏のアベフチカムイ(火の神)を中心に暮らしていて、アベオイは儀式をしたり暖をとったり煮炊きをしたりと、重要で神聖な場所であった。炉の内側にはイナウ(御幣)が立てられ、イヌンベサウシペ(削り台)の上では色々なものが削られる。炉棚の上では、サッチェブ(干し鮭)などの魚や肉の燻製が吊り下げられ、長い冬の間の保存食にされた。奥の壁際には交易で得た漆塗りのシントコ(行器、ほかい)、刀や着物などが飾られている。

アイヌの人々の生活や風習、行事などの話の後、国の重要無形民俗文化財に指定されているアイヌ古式舞踊が次々と繰り広げられる。これはトンコリの伴奏によるトンコリへチリの踊り。

これが樺太アイヌの伝統的楽器の五弦琴で、トンコリという。江戸時代には北海道宗谷地方やオホーツク海沿海地域でもほぼ同じ楽器が存在し「カー」と呼ばれて演奏されていた記録があるが、近代までに伝承は途絶え、現在判明している製作法や演奏法はすべて樺太アイヌのものである。楽器の形は人の身体を表し、ハーブ等と同じくフレットがなく弦の数しか音が出ないので、五弦だと五音だけである。

これはアイヌの伝統楽器のムックリ。竹製の薄い板(弁)に紐が付いていて、その紐を引っ張ることで弁を振動させて音を出し、それを口腔に共鳴させる。口の形を変えることで共鳴音を変化させて音楽表現とするので、口琴とも呼ばれる。

ようやく、唯一我々が知っているアイヌのわらべ歌「ピリカ」が手拍子で歌われる。「ピリカ・ピリカ、タント・シリ・ピリカ、イナン・クル・ピリカ、ヌンケ・クスネ」昔、雪村いずみが歌っていた。「ピリカ」とは好い・美しい・優れたという意。「今日はいい天気だ、どなたが好き、選んであげよ」となる。

アイヌの古式舞踊は、独特な唄と掛け声に合わせ、膝と手拍子で素朴なリズムを取りながら淡々と踊る。子守唄などの女性だけの踊りや、男性も交えたイオマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)などいくつか披露される。