半坪ビオトープの日記

阿蘇山、草千里


杵島岳烏帽子岳の間が草千里ヶ浜と呼ばれる窪地となっており、草千里ヶ浜に面して阿蘇火山博物館が建っている。約30万年前の火山活動開始から現在の姿に至る阿蘇火山の歴史をはじめ、日本や世界の火山の資料を展示している。中岳火口壁に設置した2台のカメラが捉える火口の映像をリアルタイムで観察できる。3階の5面マルチスクリーンでは阿蘇の自然や文化、噴火の様子などを上映している。阿蘇カルデラは、約30万年前〜9万年前に発生した4回の巨大カルデラ噴火により形成された、日本で2番目に大きいカルデラである(1位は北海道の屈斜路カルデラ)。約600万年前〜35万年前の火山活動も報告されているが、ほとんどが約85 万年前より新しいという。巨大カルデラ噴火の後に大規模な陥没が起こり外輪山の原型ができたとされる。

烏帽子岳は、杵島岳とともに阿蘇五岳の一峰であり、草千里ヶ浜を中心に正面に烏帽子岳、背後に杵島岳と南北に向かい合っている。熊本平野から眺める烏帽子岳は鋭く尖り、南と東は急斜面だが、西斜面は緩やかで、北斜面は側火山の草千里ヶ浜の火口に接している。

杵島岳は、約3000年前に生まれた比較的若い火山で、山頂と東山麓に3つの火口跡が並び、北東で往生岳(1238m)と接していて、二こぶの山に見える。

阿蘇山上広場から草千里ヶ浜を眺めながら杵島岳を回り込んで北に下って行く道路は、阿蘇パノラマラインと呼ばれ、文字通り一大パノラマが広がる展望所がある。山や花に気を取られてしまうが、左手のカルデラを見下ろせば、杵島岳の孫火山と呼ばれる秀麗な米塚が見つかるはずだった。標高954mの米塚は阿蘇の神・健磐龍命が収穫した米を積み上げたものが山になったといわれる。

現在も中岳周辺は立ち入り禁止だが、天候に恵まれ、時間があれば、草千里ヶ浜の駐車場から烏帽子岳杵島岳への登山が楽しめる。特に5〜6月にはピンク色のミヤマキリシマが咲き乱れるので、その時期に訪れることが望ましい。
8月中旬では夏の花も咲いている種類が少なくなっている。草千里の草原にはカワラナデシコ(Dianthus superbus var. longicalycinus)が見かけられた。本州、四国、九州の山野の日当たりの良い草原や河原に生える多年草で、ピンク色の可憐な花を7〜10月に咲かせる。
ナデシコの下の方に小さな青紫色のツリガネ型の花が咲いているが、これは日本全国に分布するツリガネニンジン(Adenophora triphylla var. japonica)であろう。本州の中国地方以西、九州、沖縄、中国に分布するサイヨウシャジン(Adenophora triphylla)とよく似るが、そちらは花冠の先がすぼまるという。

こちらの薄紫色の花は、ソラマメ属のクサフジ(Vicia cracca)である。北海道、本州、九州の山地の草原に生える多年草で、花期は5〜9月とされる。

杵島岳は、西側に回り込んで行くと、多くの深い侵食谷があり、南側から見た山容とは姿が違って見える。

こちらのセリ科の花は、シシウド属のシシウド(Angelica pubescens)である。本州、四国、九州の山地や、やや湿った日当たりの良い場所に生える多年草で、花期は8〜10月である。枝先に大型の複散形花序をつける。よく似たハナウドでは、外側の花弁が大きくなるので区別できる。

杵島岳の西麓を過ぎ、往生岳の西麓に至ると、柵もない放牧場となる。

赤い阿蘇牛や褐色の馬が仲良く混ざり合って、のんびりと草を食んでいる風景が心和む。