半坪ビオトープの日記

阿蘇山、中岳


熊本県の高森町に入り、熊本市から始めた南九州一周の旅もようやく終わりに近づいてきた。阿蘇は東西約18km、南北約24kmに及ぶ、世界最大級の面積380k㎡の阿蘇カルデラを中心としたエリアで、カルデラの中央には阿蘇五岳を筆頭に雄大景勝地が展開している。阿蘇五岳の一番東に位置するのがこの根子岳(1433m)であり、山頂部の尖峰が天に突き出る姿が印象的である。

高森町の西に進むと、根子岳からやや離れて左(西)に高岳(1592m)、中岳(1506m)の高峰が並び、さらに左手に烏帽子岳(1337m)の尖峰が見える。その裏に隠れて見えない杵島岳(1326m)を合わせて、阿蘇五岳と呼ぶ。せっかくの雄大な景観が、湧き立つ雲に邪魔されているのが残念である。

阿蘇カルデラの南麓に広がる南阿蘇村を阿蘇五岳を右手に見ながら進んで行くと、阿蘇の山並みも姿を変えていく。一番左の大きく手前に迫る山は夜峰山(913m)であり、その右遠くの山は烏帽子岳(1337m)であり、その右手前の尖った山が御竈門山(1153m)である。ここまで来てようやく雲も晴れてきた。

翌朝もまた阿蘇山には雲がかかっていた。南麓から北上し阿蘇パノラマラインを縦走して阿蘇市に抜け、天気が良ければ阿蘇外輪山の展望台に上がり、そこから広大な阿蘇五岳阿蘇カルデラを眺めたいのだがどうなることやら。まず最初に御竈門山(1153m)の尖峰が前方高くに認められた。 

そのあと数分で、夜峰山(913m)の東に広がる池の窪園地に着く。かつては火口底だったもので、その火口壁の一部が夜峰山である。右手の窪地には池もある。

阿蘇が一望できる池の窪園地の駐車場にはソーラートイレもある。まばらに見受けられる牛の群れがのんびりと草を食む牧場が広がっているので、展望所へ通じる遊歩道以外は立ち入り禁止となっている。

反対側の東には、先ほどの御竈門山が見えた。ここは夜峰山や御竈門山への登山口ともなっている。

その先すぐに今度は左側に烏帽子岳(1337m)が見えてきた。こちら側(南)はかなり険しく、登山コースとしては向こう側の草千里ヶ浜からが易しい。

御竈門山と烏帽子岳との鞍部の下を通る、火の山トンネルを抜けてさらに進むと、烏帽子岳が間近に迫ってくる。

まもなく阿蘇山上広場に着いた。ここには山頂ドライブインがあり、そこから阿蘇中岳(1506m)の火口縁の阿蘇山上駅までロープウェイで上がることができるのが阿蘇観光の目玉であるが、この時は噴火警戒レベルが2だったのでこの山上広場までしか近づけなかった。ちなみにこのあと9月中旬から11月下旬までは警戒レベルが3となったので、この山上広場も立ち入り禁止区域に指定された。熊本城からもかすかに見えたが、この時も中岳からは噴煙が吹き上げられているのが(左端に)見えるのだが、雲に紛れて写真では確認しにくい。阿蘇山は、海外の書物に記された日本最古の噴火記録(隋書倭国伝)を持ち、国内でも欽明天皇14年(553)以降、数々の噴火記録が残されている。有史以降はほとんどが中岳の噴火で、近世以降で死者が報告されているのは、江戸期に2回で計4名、明治期に数名、昭和28、33、54年に計21名である。

ロープウェイ乗り場の脇に、西厳殿寺奥之院が建っている。西厳殿寺は、古くから阿蘇山修験道の拠点として機能し、九州の天台宗の中で最高位の寺格を持つ寺院の一つである。開基説は二つあるが、後ほど麓の西巌殿寺を訪れるので、その際に触れることにする。阿蘇山は古来より縁結びの山として信仰を集めており、昔から若い男女が春と秋の彼岸に阿蘇山の火口へ詣でていた。これは「オンダケサンマイリ」といわれ、この行事に参加して夫婦の契りを交わしたという。現在の阿蘇山上本堂(奥之院)は、古跡保存のために明治23年(1890)に再建されたものである。その後幾度もの噴火にあったが建物が壊れることがなく、厄除けのご利益があるともいわれる。仏像としては、平安時代作の十一面観音立像・鎌倉時代作の前立十一面観音立像・不動明王立像・毘沙門天立像が安置されている。お堂の左脇にある小さな足手荒神堂の中には、黒曜石が張られた「鏡石」が安置されていて、石を撫でた後、体の痛い部分に触れると痛みが和らぐと信仰されている。
西厳殿寺奥之院の右手奥には、阿蘇山北麓の阿蘇神社の奥宮として阿蘇山上神社が建っている。阿蘇山の噴火口は古来より神霊池として崇められ、北の御池(噴火口)には一之宮、中の御池には二之宮、南の御池には五之宮が祀られ、祭神としてそれぞれ健磐龍命阿蘇都媛命、彦御子命が祀られている。社伝によると、「欽明天皇14年(553)阿蘇山火起こりて天に接す。阿蘇宮の中三社を祀り、奉祀せしむ。これを天宮祝という」とある。現在の社殿は、昭和33年の大噴火により被害を受けたため、同年コンクリート製で再建されている。

山上広場の東の方向には岩と砂だらけの灰色の中岳が聳え立っているが、北西には緑の草原に覆われた穏やかな杵島岳(1326m)が眺められる。

杵島岳の左手(南西)には、烏帽子岳の東斜面が眺められる。