半坪ビオトープの日記

見残し海岸


竜串湾を囲むような千尋岬の先端西側に見残し海岸がある。現在に至っても竜串からの道のりは難所のため、昭和30年頃よりグラスボートで渡ることができるようになっている。

古くより景勝地として知られた竜串海岸と比べると風除けに見残し湾を利用していた漁師以外は、この巨大な自然美・2千万年前の奇岩の景観をなかなか見ることはできなかったという。
船着き場から左に岩場伝いに遊歩道を歩き始める。シコロサンゴの群体が広がる見残し湾の入り口を、「獅子岩」がまるでスフィンクスのように守っているように見える。

地元では、あまりにも難所のため弘法大師も見残したことから「見残し」の名がついたと案内している。しかし、ジョン万次郎の漂流・留学・航海体験を「漂巽紀略全4冊」にまとめた絵師・河田小龍が、この地を「見残しの景」と命名したともいわれている。
「波の花道」から右の離れ島に小さな橋がかかり「愛情の岩」に渡れる。右手の大岩が男女が抱き合っているように見えるという。

左に廻り込むところに「つづみ岩」がある。手を打つとポンと音が帰ってくるそうだ。

遊歩道には、塩風化の「タフォニ」という小さな穴の集まりや、大きな丸い「ノジュール」もあちこちにある。ノジュールとは何かの生物などが核となってできるもので、中心には何かが化石となって入っている。

「生痕化石」は、生物の生きた痕跡の化石で、犬のフンのように見えるのは約2500万年〜3000万年前のアナジャコの住処の痕である。

次に小さな入江を右に廻りこんでいくと、「こけし岩」という表示がある。どれだかわかりにくいが、一番左下にそれらしきものが見える。このこけし岩もノジュールであるという。

この小さな岩山には、「天の窓」という小さな穴が空いているというのだが、気が付かなかった。

やがて平らな岩場に出る。平太郎釣場といって、グレ・チヌ・イシダイなどがよく釣れるそうだ。

左手には、見残しの侵食でできた岩穴で最大といわれる「人魚御殿」が現れる。昔人魚が座っているのを漁師がよく見たという。実際、人が二人向き合って寝そべられる広さがある。

この先に蜂の巣城があり、まだ折り返し点まで半分しか歩いていないのだが、時間がなくなるため見残して、ここで引き返した。

見残し海岸のある千尋岬には、約2000万年前の浅い海に堆積した砂岩と泥岩の互層からなる三崎層群の地層が見られる。砂岩層の表面には、海底の波浪や水流で砂が移動する際に作られた漣痕(ripple mark)が化石化した化石漣痕が見られる。これもその一つであろう。