半坪ビオトープの日記

東栄町花祭会館


鳳来峡のある新城市の東北にあたる愛知県北設楽郡は、奥三河の民俗芸能が残る地方として知られる。中でも有名な花祭りの中心地東栄町には、花祭りを保存伝承する花祭会館がある。
入口脇に置かれている鬼の作品は、アメリカのチェンソーアーティストのブライアン・ルース(BRIAN RUTH)による。東栄町には2000年記念イベントで来日以来、東栄町で開催されるチェンソーアート競技大会にゲストとして毎年参加している。

「テーホヘ テホへ」と夜を徹して繰り広げられる花祭は、鎌倉時代末期から室町時代にかけて、熊野の山伏や加賀白山の聖によってこの地に伝えられたといわれている。「冬至」の前後、太陽の力の復活を願って行われる「霜月神楽」の一種とされる花祭は、天竜川水系に今も伝わる神事芸能で700年以上にわたって継承されている。
花祭の根本思想は「生まれ清まり」であり、そのために浄土へ渡り、大法蓮華の花を手にして、再生した新たな命を「花」と捉えているといわれ、地元ではこの祭りを単に「ハナ」とだけ呼んでいる。
祭りは滝祓い、高嶺祭り、辻固めなど花宿の清めから始まり、神迎え、湯立て、宮人の舞、花の舞、鬼の舞、湯ばやし、神返しまで休むことなく一昼夜かけて行われるが、町内各地区によって神事や舞の種類や順に異同がある。
滝祓いで「御滝の水」を迎え、高嶺祭りで上空から来る諸霊を祀る。天狗祭りともいう。

神を迎え、悪霊を払い除け、無病息災、五穀豊穣、村中安全を願うこの祭りは、国の重要無形民俗文化財に指定され、毎年11月から3月上旬にかけて、町内11の地区で盛大に開催されている。その花祭は「振草系」「大入系」「大河内系」の3系統に分かれている。
この場面は神入り(宮渡り)という神事で、氏神御神体の分神を迎えるところである。花祭の神(きるめ・みるめ)と氏神との関係は元はなかったがいつの日か関係付けられたと考えられている。つまり氏神の祭祀は宮司が行うが、花祭は花太夫が行い、神入りという神事を行わない地区もある。原則は男の祭りで女性は見るだけだったが、近年の少子化・過疎化によりほとんどの地区で女性も参加しているそうだ。

主な神事は、祭場を清めて神々を迎える神勧請、祓い清めた釜でお滝の水を沸かして聖なる湯を献じる湯立て、諸々の願いを奉じる立願の舞、舞の後で神々を天空に返す神返しからなる。この湯立ての神事は、花祭の中でも最も重要なものとされている。

主な舞は、はばちの舞、御神楽、市の舞、地固めの舞、花の舞、山見鬼、三つ舞、おつるひゃら、巫女、ひのねぎ、四つ舞、翁、湯ばやしの舞、茂吉鬼、獅子と多い。
この花の舞は、稚児舞とも呼ばれ、6〜12歳の少年が花笠をかぶって3〜4人で舞うものである。

神の出現を意味するものは、山見鬼、榊鬼が中心である。この榊鬼は、花祭の目的である「生まれ清まり」を実現するための呪法である「へんべ」を踏む唯一の鬼で、祭りのシンボルでもある。

おつるひゃらは、地区によりおちりはりあるいは天の岩戸開きなどと呼ばれ、ひのねぎと巫女の供としておかめとひょっとこが登場し、すりこぎやしゃもじを手に性的な仕草で面白おかしく舞う。