半坪ビオトープの日記

香嵐渓、待月橋


頭が切れて残念だが、道端に依田秋圃の歌碑があった。東京出身の秋圃は名古屋に住み、木材関係の仕事でこの山野を愛したという。
ほろほろと時雨すくらし一しきり 小夜やましくれ谷わたるらし 秋圃

もみじのトンネルは巴川沿いをゆるやかに上っていき、右に川沿いへの道を分けると、もみじの間から眼下に待月橋を見下ろすことになる。

待月橋(たいげつきょう)は、香嵐渓のシンボル的存在で、撮影スポットとしても大変人気がある場所である。

帰りがけに橋を渡ることにして、一段高い道を辿って木々の合間から見過ごしていく。

道端にはアキチョウジ(Plectranthus longitubus)の花が咲いていた。茎先や葉腋から円錐花序を出し、細毛の生えた花柄の先に唇形の花を横向きに咲かせる。和名は秋に丁字形の花をつけることによる。近縁種のセキヤノアキチョウジ(P. effusus)とよく似ているが、セキヤノアキチョウジは花枝が長く、萼の裂片が尖っている。従前は、アキチョウジは岐阜県以西に分布するとされていたが、最近は愛知県以西に分布とされ、愛知県以東に分布するセキヤノアキチョウジと三河あたりで混在しているといわれる。見た感じでは中々見分けがつかないが、花柄が短いと思われるのでアキチョウジとする。花期は8〜10月で、すでに盛りは過ぎて青い花色はかなり色褪せている。

こちらの花は、シュウカイドウ(Begonia grandis)である。中国大陸及びマレー半島原産の多年生草本球根植物で、日本には江戸時代初期に持ち込まれ園芸用として栽培されてきた。花期は8〜10月。耐寒性が高く、同属の中で唯一日本に定着し野生化している。

遊歩道から左に折れると香積寺参道となり、参道の左手に大きな風外碑が建っている。風外碑とは風外禅師碑のことで、25世住職の風外本高は書画に堪能で多くの作品を残し、秋のもみじ祭りの期間中だけ収蔵されている書画を拝観できる。風外碑の手前に服部承風の漢詩碑がある。愛知が生んだ現代の代表的漢詩人といわれる。
来尋風外寺 初地蘚苔芳 巴水劃塵境 楓林擁佛堂 衣添紅葉色(略)

風外碑の前を進んでいくと、豊栄稲荷大明神の赤い旗がたなびく道を左に分けて香積寺の広い参道に出る。