半坪ビオトープの日記

男岳鞍部


男岳と横岳の鞍部から右に進めば男岳に続くガレ場となる。男岳の山頂はガレ場を越えた奥にあり、ここから20分ほど登れば着くはずだ。

鞍部に向かう道の右側の草原には、ヤマハハコの群生に混じってハクサンシャジンもたくさん咲いている。ヤマハハコ(Anaphalis margaritacea)は、北海道と本州中部地方以北の山地帯〜高山帯の日当りのよい乾いた草地に生える雌雄異株の多年草で、高さは30~70cmになる。茎には灰白色の綿毛が密生する。葉は無柄で茎に互生し、形は線状披針形。葉の表面はつやのある緑色だが、裏面は茎と同じ灰白色の綿毛が密生する。花期は8〜9月。茎の上部に淡黄色の頭花を散房状につける。白いカサカサした花弁状のものは総苞片であり、葉が変化したものである。種小名のmargaritacea は真珠状の意味で、光沢のある総苞片を真珠にたとえたものである。秋になると自然のドライフラワーになる。

鞍部に近づくと、足下にミヤマコウゾリナ(Hieracium japonicum)が黄色い花を咲かせていた。日本固有種で、本州中部地方以北と四国の剣山の亜高山帯〜高山帯の草地や礫地に生える多年草で、高さは10~40cmになる。主な葉は根出葉で、花茎にも少し葉をつけ、柔らかい感じがする。根出葉の先端は鈍頭。葉の両面に長い毛がある。茎にも全体に白い毛があり、総苞には黒緑色の毛が多い。花期は7〜8月。茎先に2〜12個の頭花を上向きにつける。コウゾリナとは、茎などの剛毛から髭を剃るという意味で「顔剃菜」あるいは「剃刀菜」から転訛したという説がある。

こちらのセリ科の花は、ミヤマトウキ(Angelica acutiloba var. iwatensis)である。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯〜高山帯の岩礫地や渓流沿いの岩上などに生える多年草で、高さは20~50cmになる。葉柄全体が鞘状に膨らみ基部は茎を抱く。葉は2〜3回3出複葉で、小葉は2〜3裂し、裂片の先は尖り縁には重鋸歯がある。花期は7〜8月。茎頂か分枝した先端に複散形花序をだし、径3mmの白色の5弁花を多数開く。小散形花序は30個ほどあり、小散形花序には20~30個の花がつく。別名、イワテトウキとかナンブトウキとか呼ばれるが、生薬として知られる当帰の元となるトウキの高山型変種である。

まもなく男岳の鞍部に至る。左側には横岳に続く、痩せ尾根の馬の背があり、左下には阿弥陀池が見える。

正面は深く谷のように落ち込み、馬場の小路、今ではムーミン谷と呼ばれるカルデラが横に広がり、女岳(1512m)・小岳・南岳の中央火口丘がある。昭和45年(1970)に女岳が噴火し、溶岩流が流出したように、秋田駒ヶ岳は今でも活火山として気象庁の常時観測火山に指定され、「噴火警戒レベル」が導入されている。右手に見える断崖は、男岳の先に下る五百羅漢という岩場と思われる。女岳手前のムーミン谷に下る際に通過するようだが、余りにも急峻なので通ることはないだろう。

男岳に向かう岩場は意外と緩やかで、足取りも軽やかに進むことができそうだ。

それに比べると先ほど通った鞍部の先の馬の背や横岳に進む尾根は、かなり痩せていてなおかつ急に見える。

右手後ろには、阿弥陀池全体が見下ろせ、彼方には岩木山も高く見える。