半坪ビオトープの日記

湯の沢間欠泉


米沢の東から南にかけては、白布温泉などの米沢八湯があるが、米沢の西の方にも飯豊、小国の秘湯がいくつかある。飯豊町にある湯の沢間欠泉湯の華は、飯豊山(2,105m)の東、飯盛山(1,596m)の麓、標高800mにある秘湯である。米沢市内からは西に約40km山の中にある。白川ダム記念館の手前を南下すると8kmほどで、茅葺屋根の大きな屋敷が残存する過疎の広河原集落があり、集落の最奥に山ノ神神社が鎮座している。

境内には明治19年(1886)に建立された自然石の草木塔が、水神様と一緒に並んで置かれている。

山ノ神神社の境内の脇にヨメナ属のカントウヨメナ(Kalimeris pseudoyomena)が咲いていた。本州の関東地方以北の山野に広く分布する多年草で、高さは50~100cmになる。野菊には似たものが多いが、葉は披針形で切れ込みがほどんどないところで区別する。右下に見える赤い穂は、クサコアカソ(Boehmeria tricuspis var. unicuspis)の雌花穂である。

山ノ神神社の脇からダートが始まり、道幅の狭い道路を7km進むと湯の沢間欠泉「湯の華」にたどり着く。宿の前には茶色い湯の華が溢れ出して堆積しているのが見られ、どんな温泉か興味を湧かせる。

左の道端には黄色いキンミズヒキ(Agrimonia pilosa)が咲いていた。北海道から九州までの山野に広く分布する多年草で、高さは30~80cmになる。葉は5~9個の小葉に分かれ、7~10月に小さな黄色の5弁花をたくさんつける。

こちらの青紫色の唇形花をたくさんつけているのは、カメバヒキオコシ(Plectranthus kameba)である。東北地方南部から関東、中部地方の山地に生える多年草で、高さは60~90cmになる。葉の先端が3裂し、真中の裂片が長くなる形を、亀の尾に見立てて亀葉と呼ぶ。ヒキオコシ(引起)とは、「葉が苦く、起死回生の力がある」ことに由来する。

湯の沢間欠泉は、今から430年ほど前の天正年間(1573~91)に金採掘者が湧出温泉として発見し、そのまま利用されたといわれている。明治末には温泉の分析をして療養泉と通知を受けたが、実際に小屋が建てられ温泉として利用されだしたのは大正(1912~26)の中頃だという。夏場だけの湯治場の写真が残されている。昭和になり林道が開発され、徒歩区間が4kmほどになってから繁盛したそうだ。昭和42年の羽越大災害によって温泉施設が流失してしまったが、昭和47年の試掘調査で現在のような間欠泉になった。平成11年に休憩施設ができ、平成18年に地元住民有志により会社が設立され、木造二階建ての山荘が建設されて営業を開始した。
日本で唯一入浴できる間欠泉露天風呂を持つ温泉宿であるが、豪雪地帯であるため4月下旬から11月上旬までの営業である。間欠泉は通常10~30分間隔で5分前後、2mほどの湯柱を炭酸ガスの圧力で吹き上げ、運が良ければ一日一度の割合で5mになるという。

泉質は、ナトリウム・カルシウム―炭酸水素塩・塩化物泉として登録されていて、混浴露天風呂の色は茶色である。

泉温は35℃ほどでかなり低温であり、内湯で暖まりながら露天風呂を眺めて、湯が上がるのを待つのがよい。