半坪ビオトープの日記

大雪渓


第二花畑が終わるところにもコエゾツガザクラの大群落があった。コエゾツガザクラは雑種第一代であり、多くの花を咲かせ種子も作るのだが、その種子から子孫を残すことはほとんどなく、まれに戻し交雑が起こるとニシキツガザクラになるという。このようにコエゾツガザクラは、種としての自立性(子孫を残す能力)がないといわれている。

黄色いミヤマキンバイの花も陽に当たると鮮やかさを増す。花をよく見ると、花弁は広倒卵形で5個つき、花弁の先は少しへこみ、付け根の部分が橙黄色となっている。雄しべは20個、雌しべは多数ある。葉は3出複葉で、小葉は倒卵形で粗い鋸歯がある。

またもやエゾコザクラの群生があった。エゾコザクラは雪解け後の1週間〜2週間という早い期間に開花が始まり、1週間ほどで咲き終わる。大雪山のように大きな雪田があると雪解けは2ヶ月近くに渡って続くので、雪が早く解ける場所と、遅く解ける場所とでは、花粉媒介昆虫によって受粉し遺伝的に交わることが制限されていると解明されている。つまり血縁的な遺伝構造が強化されているという、高山生態系に特有の遺伝子構造であると考えられている。

先ほど見たヨツバシオガマの葉は4個だったが、こちらの葉は5個ある。ヨツバシオガマというけれども、実際には4〜6個輪生するという。

白いハクサンボウフウに吸蜜しているのは、エゾシロチョウである。前翅の先が丸みを帯び薄いので雌である。シロチョウ属のモンシロチョウより一回り大きく、翅を広げると65mmほどある。ミヤマシロチョウ属で、各種サクラ類などバラ科植物を食草とし、サクラやリンゴの害虫ともなり、幼虫は青虫ではなく毛虫である。滅多に北海道に行かない蝶好きには可愛く見えるが、北海道在住の農家やサクラを愛する人には嫌われているという。

今度は登山道の行く手に大きな雪渓が現れた。先ほどの雪田とどこが違うのかといえば、雪田とは吹きだまりの雪が窪地に残っているもので、雪渓とは谷地形に多量に積もった雪が夏まで残っているものである。

つまり、谷地形か緩斜面の吹きだまりかの違いなので、境界はあいまいである。しゃがんで上を見ると、流れてくる様子がよくわかる。

下を見ても、どこまで続いているか分からないほど長い。ここでは上から流れてきて下に流れているので雪渓とした。

細長い雪渓だが、幅は10数mなので難なく渡ることができた。