半坪ビオトープの日記

無事下山


コケモモの赤い実はあちこちで見かけたが、ようやく咲き残っていた花を見つけた。本州の花は白っぽいが、北海道の花はかなり赤みを帯びていて、3~8個が下向きに咲く。花冠は長さ約6mmの鐘形で浅く4裂し、雌しべの花柱が花冠より突き出る。

帰りがけにもミヤマキンバイを見かけた。こちらも細長いミヤマイと一緒にセットで生えていた。

エゾコザクラの群落も素晴らしく、しばし眺めながら休憩した。普通、花茎の先には花が2~6個つくのだが、この株は豪華にも花が10個もついている。

ウコンウツギの花の内面下側は赤褐色を帯びているが、よく見ると若い黄色っぽいものからくたびれた赤っぽいものに色が変化している。その理由は次のように研究されている。普通、植物は受粉したあとすぐ花びらを落とすが、ウコンウツギでは黄色から赤色へ変化させる。赤と黄色織り交ぜて、より多くの花でマルハナバチを引き寄せて、近くに来たら黄色の若い花に誘い、最後の黄色の花が受粉すると一斉に花を落とすという(北大:井田)。ほんまかいなと思うほどの動植物の密接な共存関係に驚嘆する。

ミツバオウレンの5枚白く見えるのは萼片である。本当の花弁は小さな黄色い高杯状で、蜜を分泌する。

ウラジロナナカマドは、秋になると赤い果実を熟すが種子にはアルカロイドが含まれ有毒である。ただし、赤い実と紅葉は秋の高山を素敵に彩るので人気がある。

300階段というが実際には700段以上もあるという階段を下り、こんなに大岩がゴロゴロしていたかと思うほどたいへんな道を黙々と下っていくと、ようやく上ホロ分岐を過ぎて、遥か彼方に十勝岳温泉が見えてきた。
安政火口が源流の、ヌッカクシ富良野川という小さな沢を渡って折り返すと、あとは十勝岳温泉まで半時間くらいだろう。

疲れきった足を引きずるように歩いて温泉に近づいた頃、道端でミヤマコウゾリナ属のコウリンタンポポ(Hieracium aurantiacum)を見かけた。ヨーロッパ原産の帰化植物で、明治初期に観賞用として持ち込まれ野生化したとされる。特に北海道で広く帰化していて、こんな山地にも生えている。濃いオレンジ色の花は可愛いが、繁殖力が強く、北海道では在来種植物への悪影響が懸念されている。
コウリンタンポポの蜜を吸っているやや大き目のシロチョウは、ミヤマシロチョウ属のエゾシロチョウ(Aporia crataegi)である。日本では北海道のみに分布するが、ヨーロッパからユーラシア大陸北部にも広く分布する。サクラなどのバラ科植物を食草とし、アザミやシシウドなどの花で吸蜜する。ゆるやかに飛ぶ姿はとても優雅である。
ようやく、1回目の往復5時間強の軽装ハイキングを無事やり遂げて、次の温泉宿に向った。