半坪ビオトープの日記

山崎カール


立山室堂から北に向い、立山室堂山荘前を通って、ミドリガ池とミクリガ池の間の遊歩道を北西に歩いていく。道端に鮮やかな朱赤色のユリが咲いていた。クルマユリ(Lilium medeoloides)である。北海道と本州中部地方以北と大台ケ原山と四国の剣山の亜高山帯から高山帯の草地に生える多年草で、茎に輪生する葉を車輪に見立てて和名が名付けられた。高山植物の中では丈が高く、お花畑ではよく目立つ。
遥か前方には、別山(2,880m)の山裾がわずかに見えるが、やはり厚い雲が山全体を覆っている。

右手下方の谷は浄土沢で、立山三山(3,015m)や真砂岳(2,861m)は雲に覆われて見えないが、氷河地形の圏谷である山崎カールの下の山裾の雪渓が細くなってもまだ数多く認められた。

遊歩道の脇で、テガタチドリ(Gymnadenia conopsea)の花を見つけた。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の草地に生える多年草で、根が肥厚して掌状に分かれるため手形の名がある。チドリは花の形を千鳥に見立てたものである。

こちらの風変わりなマメ科の花は、イワオウギ属のイワオウギ(Hedysarm vicioides var. japonicum)である。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の草地・砂礫地に生える多年草で、別名をタテヤマオウギともいう。漢方薬の黄耆(おうぎ)に似るのでこの名がある。黄白色の花を10~30個房状に咲かせる。よく似たゲンゲ属のシロウマオウギやタイツリオウギと比べて、花が穂状に長く多いこと、果実の形で区別する。

足下に小さなリンドウが咲いていた。リンドウ属のミヤマリンドウ(Gentiana nipponica)である。北海道と本州中部地方以北の高山帯の草地に生える多年草で、高さは5〜10cmと低い。株の基部に根葉がなく、葉は茎に直角以上に開出する。

ようやく右手下方にミドリガ池が見えてきた。まだ池畔には雪が残っていて、池の水も冷たそうに見える。

足下には黄色く小さなキジムシロ(Potentilla fragarioides var. major)が咲いていた。日本各地の草原から高山までに広く分布する。同属のミヤマキンバイとよく似るが、葉の縁にはやや三角形の規則正しい鋸歯がある。

キジムシロの隣にはカワラボウフウ属のハクサンボウフウ(Peucedanum multivittatum)がまだつぼみの状態で咲きかけていた。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の草地に生える多年草で、小葉は披針形から卵円形で粗い鋸歯があるが、大きさや形は非常に変化に富んでいる。このように葉が深裂したものをキレハノハクサンボウフウ(P. m. f. dissectum)と区別することもある。