半坪ビオトープの日記

ミクリガ池


ようやく今回の宿泊地、ミクリガ池温泉が見えてきた。手前のミクリガ池は、標高2,405mに位置する池で、室堂駅から西北500mほどのところにあり、室堂で最大・最深の池である。面積は約3万㎡、池の深さは15m、池の周囲は631mである。立山火山の火口湖であり、春山の残雪期には完全に氷結している。

立山信仰の中では、ミクリガ池は立山地獄の中の「八寒地獄」であるとされた。その反面、「ミクリ」という名は「御厨」と書き、「神の厨房」という意味をもつ。この池の水が立山権現に捧げられ、この池の水を使って立山権現に捧げる料理が作られたのである。

池の北西の畔の標高2,430mにあるミクリガ池温泉は、日本最高所の温泉宿として知られる。室堂駅からミクリガ池や雷鳥沢を廻る遊歩道が整備されている。

宿の前をひっきりなしに登山客が通り過ぎていくが、この先の雷鳥沢辺りのヒュッテや山荘に泊まるものと思われる。このミクリガ池周辺はハイマツ帯で、ライチョウの生息地となっている。
宿で荷物を下ろし、急いで室堂平の散策に出かけた。なにしろ翌日も天気が悪そうなので、今のうちに少しでも歩いておきたい。

まず温泉の右手の遥か下方に地獄谷が見える。典型的な火山地形が見られる周遊コースだったが、火山ガスの濃度が高くなったため、2012年度から通行止めとなっている。地獄谷の向こうには、奥大日岳(2,605m)の大きな山容が頂上を残して眺められた。

先ほど通った道を戻り室堂平に向う。右手(東側)にシュロソウ属のコバイケイソウ(Veratrum stamineum)の大きな群落が見える。北海道と本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯の草地に生える多年草で、高さは50cmから1mほどになる。花は白色で円錐状に多数つき、頂枝に両性花、側枝に雄花がつく。雄しべは花被片より長く、横から見ると突き出ているのが見える。立山にはコバイケイソウバイケイソウの中間種のコシジバイケイソウ(Veratrum ×nipponicum)があるというので探してみたが見つからなかった。雄しべは花弁より短く、横から見ても突き出ないという。

道端にフウロソウ属のハクサンフウロ(Geraniumu yesoense var. nipponicum)が咲いていた。本州中部地方以北の高山帯の草地に生える多年草で、葉は掌状に深裂し、紅紫色の花を咲かせる。園芸植物のゼラニウムと同属である。

雪田の脇には、小さな白いチングルマと大き目の白い花、イチリンソウ属のハクサンイチゲ(Anemone narcissiflora var. japonica)が咲いていた。本州中部の高山帯の草地でよく見かける多年草で、葉は深裂する。高山植物の代表種の一つといえよう。

室堂駅より手前で左に折れ、室堂平の慰霊碑前を通る。昔から信仰の山として登られてきた立山だが、これまでここで遭難する人は数多くいて、供養のための慰霊碑が建てられている。その先には立山室堂山荘と立山室堂が見え、その奥には雄山(3,003m)を中心とする立山三山が聳えているのだが、厚い雲に遮られて見えない。明日もこの程度ならせめて右の峠、一の越(2,705m)まで登ってみたいと思ったが、二度と一の越も見ることができなかった。

立山室堂に向う途中で、キンポウゲ科キンバイソウ属のシナノキンバイ(Trollius riederianus var. japonicus)を見かけた。北海道と本州中部地方以北の高山帯の草原に生える多年草で、群生することが多い。